源氏鶏太(1912-85)の現代小説。1951年から52年にかけて《サンデー毎日》に連載。戦後風俗を背景に,総務部長から特進した新社長と,その補佐をする人事課長のコンビを軸に,サラリーマン気質のしみついた重役の哀歓を軽妙に描く。敗戦後,占領軍による旧指導者層の追放と交替に登場した成り上がりの新指導者への風刺や自嘲が共感をもって迎えられ,この題名は流行語となった。52年東宝で映画化。またこの小説のユーモアは中村武志(1909-92)の目白三平物に受け継がれ,アイロニーは深められて山口瞳(1926-95)の江分利満氏物へと展開する。《三等重役》は,戦前のユーモア小説の流れをくみながら,戦後の給与所得層の生活と心情を描いたサラリーマン小説の原点にあたる。この系譜は,今日では企業の戦士としてサラリーマンを描く城山三郎(1927-2007),さらに国際的な視野に立つ深田祐介(1931- ),堺屋太一(1935- )らの小説へと拡大し多様化されてきている。
執筆者:浅井 清
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
…コメディアンも1人で観客を動員することが困難になっていった。東宝を例にとれば,《三等重役》(1952)に始まる《社長》シリーズ(サラリーマン喜劇)と,《駅前旅館》(1958)に始まる《駅前》シリーズ(商売喜劇)は,いずれも,森繁,伴淳三郎,フランキー堺,三木のり平らを軸にした〈喜劇人総出演〉型である。そうした中で,植木等主演の《ニッポン無責任時代》(1962)は,サラリーマン喜劇に属しながら,陽気なピカレスクの輝きを見せ,異彩を放つが,シリーズ化された後続の作品は平凡なものとなった。…
※「三等重役」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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