荘園の経営に当たる上級荘官。下司(げし)に対する呼称で,一般には預所(あずかりどころ)をさす。《平戸記》には〈寛治の定文に依るべくんば,上司と申すべきは是預所也〉とある(ただし,例は少ないが預所を〈中司〉と呼ぶこともある)。上司職ということもあり,1147年(久安3)東大寺政所は大法師覚光を飛驒荘上司職に補任している。上司の史料上の初見は,1024年(万寿1)3月9日の興福寺唯摩会料所の大和国葛上郡菓子御園司解状の署判者に,駿河介賀茂光頼と僧4名が〈上司〉として見えるものである。12世紀前半,預所として対国衙闘争に勝ち抜き,東大寺領伊賀国黒田荘を東大寺の一大荘園として完成させた覚仁も〈上司威儀師〉と署判している。上司には当然給分があり,上司佃・上司畠などと記す史料がある。鎌倉幕府は,御家人が荘園の預所となることを,地頭である傍輩の上に立つことになる(傍官上司)としてこれを禁じた。
執筆者:工藤 敬一
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…〈げす〉ともいう。本来上司(うえつかさ)に対する下司(したつかさ)で,身分の低い官人の意であるが,普通中世荘園において,在京荘官の預所(あずかりどころ)を上司あるいは中司というのに対して,現地にあって公文(くもん),田所,惣追捕使等の下級荘官を指揮し,荘田・荘民を管理し,年貢・公事の進済に当たる現地荘官の長をいう。惣公文と呼ばれることもある。…
…総じて鎌倉後半期から武士の預所化や,預所の武士化がすすむ。なお預所は,在地荘官の下司(げし)に対し,中司または上司と呼ばれることがある。中司は在荘預所,上司は在京預所の場合が多い。…
※「上司」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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