新築のとき柱梁などを組み立てた上に棟木を上げること。棟上(むねあげ)ともいい,その儀式をも指す。古い時代の儀式では,大工は束帯を着し幣(ぬさ)を取って屋上に昇る。天御中主(あめのみなかぬし)尊,大日孁貴(おおひるめのむち),月弓(つくゆみ)尊などをまつる祭壇は正式には屋上と柱根両所に設けるが,略していずれか一方に設けることもある。祭壇には槌,鏡餅,陰形(めがた)餅,九曜餅,月形餅,魚貝・野菜類,清酒,木綿綱,破魔弓,扇子などを供える。拍手,神供,祝詞のあと棟槌の式があり,千歳楽・万歳楽登と唱え,槌を打つ。その回数は一の槌より三の槌までそれぞれ七五三となっている。式後餅や銭を投げることがあった。上棟札は鎮宅守護の斎札で,社寺の場合檀越(だんおつ)主家の名や信仰,功徳等のことを書く。近世には檜板を用い頭を駒形にし表は中央に大元尊神,家門長久栄昌守護所,左右に罔象女神(みつはのめのかみ),五帝竜神,手置帆負(たおきほおい)神,彦狭知(ひこさち)神などの神号を表す。神社では表に天御中主尊,裏に水の絵,吉祥の文字などを書く。
→建築儀礼 →棟札
執筆者:村山 修一
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…古代寺院の造営でも,基礎工事では鎮壇具を地中に埋めて安全を祈り,完成のときには造立供養(ぞうりゆうくよう)が行われた。平安時代以降の建築工事では,礎(いしずえ)(礎石を据えるとき),手斧始(ちようなはじめ)(事始(ことはじめ),木作始(きづくりはじめ)とも呼び,材木加工の開始),立柱(りつちゆう)・柱立(はしらだて)(柱を立てるとき),上棟(じようとう)・棟上(むねあげ)(棟木をのせるとき)が主要な儀式で,日時をあらかじめ陰陽師が卜占し,当日は建築工匠と工事関係者が工事場に集まって儀式を行った。手斧始では工匠が材木に墨糸で墨を打って手斧で削る所作を行い,上棟では棟木上に五色の絹や御幣を飾り,酒を供えた。…
※「上棟」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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