上皮内癌(読み)じょうひないがん

百科事典マイペディア 「上皮内癌」の意味・わかりやすい解説

上皮内癌【じょうひないがん】

(がん)細胞病変上皮内にとどまっているもの。部位によって非浸潤癌,粘膜内癌,乳管内癌ともいう。上皮内癌は,基底膜という膜に囲まれており,血管リンパ管と接触していないため,まだ転移はしていない。 ごく早期の癌なので自覚症状はほとんどないが,最近では検査機器の進歩によって上皮内癌でも見つかるようになった。早期治療・手術をすれば,部位によっては5年生存率は100%近い。胃癌などで腹腔鏡下手術の適用にもなり,手術による侵襲(体に与えるダメージ)も少なくてすむ。 上皮内癌を放置しておくと,いずれ大きくなって転移するといわれる。慶応大学医学部放射線科の近藤誠講師は〈上皮内癌のなかには,転移をしない病変(がんもどき)も多く含まれている〉として,手術を否定する。これに対して,上皮内癌には将来的に転移する癌が多く含まれるので,手術は必要とみる医師も多い。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「上皮内癌」の意味・わかりやすい解説

上皮内癌
じょうひないがん
cancer in situ

上皮基底膜上に発育基盤をもち,この基底膜を越える間質へは浸潤をしないで,上皮組織内だけに平面的に増殖する癌をいう。初期の癌であり,子宮頸癌のゼロ期がこの状態である。

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世界大百科事典(旧版)内の上皮内癌の言及

【子宮癌】より

…以上のように,早期に発見しやすいし,また十分な治療がしやすいので,子宮癌はよく治るわけである。
[上皮内癌(0期の癌)]
 頸癌では病気の進み具合の程度によってI期からIV期まで分類されているが,このほかに0期と呼ばれているものがある。子宮頸部の上皮が悪性の腫瘍になると必ず上皮の下の組織に侵入する。…

※「上皮内癌」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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