上腕骨骨折(読み)じょうわんこつこっせつ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「上腕骨骨折」の意味・わかりやすい解説

上腕骨骨折
じょうわんこつこっせつ

上腕骨の骨折は多くみられる骨折の一つで、骨幹部、上端(近位部)、下端(遠位部)の骨折に分けられる。

 上腕骨骨幹部骨折は、直達外力によるものと介達外力によるものとがある。投球動作や腕相撲(うでずもう)などでみられるものは、筋力によるものである。直達外力によるものでは横骨折、介達外力によるものでは斜骨折が多く、完全骨折で転位が著明であることが多い。順調に経過すれば6~8週ぐらいで骨癒合がおこるが、横骨折では骨折面が狭いので遷延治癒や偽関節になりやすい。また、骨片や骨欠損、開放骨折、感染などが骨癒合を遅らせる原因となる。ただちに整復して固定しなければならない。牽引(けんいん)療法も行われ、観血的整復後固定術が必要となる場合が多い。なお、上腕骨骨幹部に接して斜めに橈骨(とうこつ)神経が走っているので、橈骨神経麻痺(まひ)を合併することがある。

 上腕骨上端骨折としては上腕骨外科頸(けい)骨折がしばしばみられる。上腕骨骨頭が体部に移行する境界部で骨折がよくみられるため、解剖頸(解剖学的頸部)に対してこの部分を外科頸とよんでいる。老人に多く、手掌または肘(ひじ)をついて倒れたときにおこりやすい。牽引療法、ギプス固定が行われる。ギプス固定としては、上腕骨中央部から肘の屈曲位で前腕までギプス包帯を巻き、それを首からつるす懸垂ギプス包帯法がしばしば用いられる。整復状態が悪いときは、観血的手術が必要である。肩関節の運動障害を残すことが少なくない。

 上腕骨下端骨折は、下端の上腕骨顆(か)部にみられる骨折で、小児に多い。もっともしばしばみられるのは上腕骨顆上骨折であり、そのほか外顆骨折、内顆または内上顆骨折などがある。上腕骨顆上骨折は、小児が手をついて倒れ肘(ちゅう)関節部を傷めたとき、まずこの骨折が考えられるくらいに多い骨折で、肘関節部が腫脹(しゅちょう)して変形するので脱臼(だっきゅう)のようにみえる。X線検査が診断上、重要である。全身麻酔のうえ整復して固定する。牽引療法もしばしば行われる。完全に整復されないと内反肘(ないはんちゅう)(上腕軸と前腕軸が肘関節で一直線にならず、前腕が内方に屈曲した状態)の変形を残すので、観血的整復を必要とすることもある。3~4週で骨癒合するが、治療中に骨化性筋炎、阻血(そけつ)性拘縮など重い合併症をおこすことがあるので、十分な注意が必要である。

[永井 隆]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

家庭医学館 「上腕骨骨折」の解説

じょうわんこつこっせつ【上腕骨骨折 Fracture of Humerus】

[どんな病気か]
 転倒の際、手や肘(ひじ)をついたときによく発生します。骨幹部の骨折は青壮年に多く、上腕顆上骨折(じょうわんかじょうこっせつ)は小児に多くみられます。肘部(ちゅうぶ)外傷を負ったときは、小児でも上腕骨外顆骨折(がいかこっせつ)がおこります。
 外顆頸骨折は、肩関節部に近いところに外側から強い外力が加わっておこります(「治療」は「◎骨折の症状参照)。

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