中国の環境問題(読み)ちゅうごくのかんきょうもんだい

共同通信ニュース用語解説 「中国の環境問題」の解説

中国の環境問題

中国では急速な経済成長に伴い、大気汚染や水、土壌重金属汚染深刻化している。自動車排ガスや、鉱山、化学工場によるカドミウムなどの垂れ流しが原因で、住民のがん発生率が異常に高い「がん村」が多数現れるなど健康被害も後を絶たない。近年各地の亜鉛鉱山周辺地域などでイタイイタイ病など日本の公害病と似た症状が報告されている。企業の環境破壊や行政の環境問題への対応に不満を持つ住民による抗議活動も増えている。(北京共同)

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知恵蔵 「中国の環境問題」の解説

中国の環境問題

中国における高度経済成長は大規模な環境破壊を伴っている。環境汚染に伴う経済損失はGDP比で数%規模に達しているといわれる。大気汚染による被害として死亡を取り上げている推計もあり、公害病が生じている可能性も高い。本格的な調査研究が必要だが、環境汚染により生じた被害を公的に調査しその結果を公表すること自体が、汚染を引き起こした責任は誰にあるのか、被害者の救済損害賠償は誰が行うのか、といった問いを突きつけることになる。 中国環境問題は国内問題であると同時に、2005年に起きた中国東北部を流れる松花江への汚染物質流出事故や酸性雨問題に見られるように、国境を超えた影響を持つ問題でもある。さらに、環境被害は現存するものだけではない。今後の経済発展有り様は、東アジアの環境や地球温暖化防止の未来にも決定的ともいえる影響を及ぼすであろう。現在日本にある自動車の台数は約7800万台にのぼるが、中国において同じ対人口比率で自動車が走ることになれば8億台を超える。この数字は現時点の世界全体での自動車台数に近く、中国の経済発展が日本並みの水準に到達するならば、有限の地球に自動車が倍増する。ともすると、自動車単体の技術進歩がもたらす環境効果を帳消しにし、地球温暖化防止への努力を水泡に帰すことになりかねない。この事実は中国経済に新しいパラダイム、すなわち環境的持続可能性基準に基づく持続可能な発展の理念を持ち込む必要性を強く示唆している。

(植田和弘 京都大学大学院教授 / 2008年)

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