中老(読み)チュウロウ

デジタル大辞泉 「中老」の意味・読み・例文・類語

ちゅう‐ろう〔‐ラウ〕【中老】

50歳ほどの年ごろ。また、その人。
「―の品の好い細君は」〈花袋田舎教師
武家の職名。
鎌倉室町時代引付衆ひきつけしゅうのこと。
㋑豊臣時代、五大老五奉行中間にあって政務を行った職。
室町・江戸時代、諸侯の家老の次位にあたる職。
武家の奥女中で、老女の次位にあたる職。
江戸新吉原妓楼で、内証雑用をする下男。中郎。
「下の―の人をたのんで呼びにやってくんなんし」〈洒・錦之裏

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精選版 日本国語大辞典 「中老」の意味・読み・例文・類語

ちゅう‐ろう ‥ラウ【中老】

〘名〙
① 五〇歳ぐらいの年ごろ。また、その人。四〇歳を初老というのに対する。中老人。
※ささめごと(1463‐64頃)下「わかき程中老までも諸道に勝劣のなき人も、程なく行ぬかるる事、よろづの道にわたりてありとなり」
※田舎教師(1909)〈田山花袋〉五〇「中老の品の好い細君は」
室町幕府・鎌倉幕府・諸大名家などで重きをなした武家の重臣をいう。宿老中老と併称されることが多い。
※鎌倉殿中以下年中行事(1454か)八月朔日「唐物は中老被替、宿老中老申継、於殿中御食を被給」
中世惣村を構成する、長・老・乙名(おとな)、中老・若衆という年齢階梯制の組織単位の一つ。惣村を指導する老をたすけ、実務を担当した。
※政基公旅引付‐永正元年(1504)四月五日「地下中若衆に中老を相撰、船淵之しきを為首廿余人」
④ 武家の職名。
(イ) 豊臣時代、五大老・五奉行の間にあって軍国の政務にあずかった職。小年寄(ことしより)
※豊臣秀吉譜(1642)中「以生駒雅楽頭・中村式部少輔一氏・堀尾帯刀吉晴中老
(ロ) 江戸時代の諸大名家で、家老の次の位にある重臣。年寄。
※高橋記(1651)一三「依然秋月殿も信用不斜、家老中老歴々を召集られ」
⑤ 武家の奥女中で、老女の次席
浄瑠璃傾城反魂香(1708頃)上「宮内卿とて中老の局立出」
⑥ (「中郎」とも書く) 江戸新吉原の妓楼で内証の雑用をする下男のこと。
洒落本・青楼昼之世界錦之裏(1791)「下の中郎(チウロウ)の人をたのんで呼にやってくんなんし」

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改訂新版 世界大百科事典 「中老」の意味・わかりやすい解説

中老 (ちゅうろう)

集団の成員のうち,その運営に発言権をもつ年寄(老(おとな),大人)と若い者の中間に位置し,年寄に次ぐ発言力をもった成員。中年寄。室町時代から,村・町・大名家・幕府などに見られる。室町幕府では宿老である評定衆に対して引付衆が中老と呼ばれていた。戦国大名武田氏にも中老の職があったことが《甲陽軍鑑》に見える。豊臣氏では五大老と五奉行の間に三中老(生駒親正,中村一氏,堀尾吉晴)が置かれたとされるが,職掌は明らかでない。江戸幕府の職制には中老はないが,若年寄が語義の上ではこれに相当する。また江戸幕府大奥の女中に,年寄の次の役として中﨟(ちゆうろう)があった(﨟は年功という意で老と大差ない)。諸大名家でも家老の次の格の大身の家臣を中老と呼ぶことがあり,町や村でも年寄と若い者の中間の年齢階梯にある者を中老と呼んだ地方もあった。
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伝統的村落では,壮年男子を構成員とする年齢集団をさし,宿老(しゆくろう)ともいう。全国的に分布するが,若者組(わかものぐみ)(若い衆,若連中)に接続し,若者組を年限がきて脱退した者を構成員とする,独立した組織の所と,若者組内部の組織として,若者組の年長者層をいう所とがある。前者は西日本に,後者は東日本に多い。これは,若者組が西日本では未婚者もしくは25歳前後までの青年を組織する青年型,東日本では結婚後も構成員として残り,35歳とか42歳になって脱退する青壮年型であることが多いことによる。しかし,東日本でも若者組を抜けた者を中老と呼ぶ所がある。そのような所では,中老は40歳代の者であり,各家の世帯主層となる。独立組織としての中老の場合も,その活動は若者組の後見とか監督であり,また若者たちとともに祭礼を執行することである。中老は若者組と密接に関連した組織といえよう。そのため,中老が独自の機構や役職をもち,独自の事業を行うことはまれである。若者組内部の階梯としての中老の場合は,若年者層に対し権威をもち,若者組を統制する。そして中老経験者から若者頭などの役職者が出る。いずれにしても,村落組織としての中老の存在は顕著だったとはいえず,存在しなかった所も多い。この年齢層が,各家の世帯主もしくは近く世帯主になる者たちであり,家業経営に生活の中心が置かれたためと考えられる。明治後期以降の若者組の青年会,青年団への再編成過程で,中老は切り離され,多く消滅へ向かった。
大人 →年齢集団
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世界大百科事典(旧版)内の中老の言及

【宮座】より

…14世紀以降の荘園制の解体と惣庄・惣村((そう))の成立により地縁的な性格を強めた宮座の活動が近畿地方を中心に顕著にみられるようになった。そこでは左座と右座,東座と西座,横座・中座・下座,古座と新座というように重層的な構造をもつものがみられ,また宮座を構成する座衆が若衆,中老,おとな(乙名,老,年寄)という﨟次(ろうじ)により区分される例がみられた。この時期には惣村制を背景に宮座のおとな層が惣村の運営にあたることも多かった。…

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