乍ら(読み)ナガラ

デジタル大辞泉 「乍ら」の意味・読み・例文・類語

ながら【乍ら】[接助]

[接助]
動詞・動詞型活用語の連用形に付く。二つの動作・状態が並行して行われる意を表す。「ラジオを聞き乍ら勉強する」「左右を見乍ら横断する」
「いといたうなげき―で給ひぬ」〈落窪・三〉
名詞、動詞型活用語の連用形、形容詞型活用語の連体形などに付く。内容の矛盾する二つの事柄をつなぐ意を表す。…にもかかわらず。…ではあるが。「学生乍ら読書もしない」「知ってい乍ら答えない」「狭い乍らも楽しく暮らす」
「我が宿の物なり―桜花散るをばえこそとどめざりけれ」〈新古今・春下〉
体言副詞、動詞型活用語の連用形などに付く。ある状態のままにある意を表す。…のまま。…のとおり。「昔乍ら街道」「い乍らにして手に取るようにわかる」
源氏の五十余巻、ひつに入り―、…得て帰る心地のうれしさぞいみじきや」〈更級
体言・副詞などに付く。そろってそのまま、同じ状態にある意を表す。全部。…とも。それごと。「兄弟乍ら技師になる」「三回乍ら失敗した」
[補説]種々の語に付くが、概して、活用語に付くものは接続助詞、名詞・副詞などに付くものは「…の本質において」「…として」「…のまま」の意を表す。接尾語、または、副助詞と考えることもできる。中でも接尾語としての用法が古く、後に接続助詞としての用法が現れたという。同類の接続助詞に「つつ」があるが、近世以降は「ながら」が優位に立つようになった。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「乍ら」の意味・読み・例文・類語

な‐がら【乍がら】

  1. 〘 副詞助 〙 ( 接尾語・接続助詞とする説もある )
  2. 体言または動詞の連用形を受け、「本性のままに」「…に従って」の意を表わす。
    1. [初出の実例]「やすみしし 吾が大君 神長柄(ながら) 神さびせすと 吉野川 激つ河内に 高殿を 高知りまして」(出典万葉集(8C後)一・三八)
    2. 「教へ悟し給ひ那我良(ナガラ)船居作りたまへれば」(出典:延喜式(927)祝詞)
  3. ( の意から ) 「まま」「ままで」の意を表わす。動詞の連用形・体言・形容詞の語幹・副詞、まれに活用語連体形を受ける。
    1. [初出の実例]「針袋帯び続け奈我良(ナガラ)里ごとに照らさひあるけど人も咎めず」(出典:万葉集(8C後)一八・四一三〇)
    2. 「旅の御姿ながらおはしたり」(出典:竹取物語(9C末‐10C初))
  4. 動詞の連用形を受け、二つの動作が並び行なわれることを表わす。つつ。動詞を省略した「涙ながら」のような言い方もある。→なみだながら
    1. [初出の実例]「憤る 心の内を 思ひ延べ 嬉しび奈我良(ナガラ)枕付く つま屋の内に」(出典:万葉集(8C後)一九・四一五四)
    2. 「食ひながら文をも読みけり」(出典:徒然草(1331頃)六〇)
  5. 体言・形容詞語幹・活用語の連用形、まれに活用語の連体形を受け、「にもかかわらず」「ものの」「けれども」の意を表わす。
    1. [初出の実例]「身は賤しながら母なむ宮なりける」(出典:伊勢物語(10C前)八四)
    2. 「一の大臣と云ふ乍ら、美麗の装束、事の外にて参たる、便无き事也」(出典:今昔物語集(1120頃か)二二)
  6. ( の意から。数詞や副詞「さ」を受けて ) 「すべて」「…とも」の意を表わす。
    1. [初出の実例]「犬の前足をふたつながら肩にひきこして」(出典:大鏡(12C前)六)
    2. 「心にかからん事の本意を遂げずして、さながら捨つべきなり」(出典:徒然草(1331頃)五九)

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