改訂新版 世界大百科事典 「乳母の草子」の意味・わかりやすい解説 乳母の草子 (めのとのそうし) 室町時代の女訓書。作者未詳。14世紀前半の成立か。傅育する子女にあてた体裁で,文体は候文。〈女は心のたしなみを本(ほん)とせよ〉の序のあと,顔つき,衣装,道具,住居,故実,作法,技芸,趣味,養育,仏事などの生活全般にわたる教えを,《源氏物語》などを引いて説いている。とくに〈万のことは恥を知り候へば身修まるものなり〉として,主(しゆう)や夫,召使いに対しては,〈義理,堪忍,慈悲〉の道理を重んじ,慎みの心を持てとする点に,貞淑な婦徳を勧める時代相がうかがえる。《めのとのふみ》(阿仏尼の作か)や《身のかたみ》(一条兼良の作か)とともに,中世女訓の系譜を形成している。執筆者:伊藤 敬 出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報 Sponserd by