乳管拡張症(読み)にゅうかんかくちょうしょう(その他表記)Mammary duct ectasia

六訂版 家庭医学大全科 「乳管拡張症」の解説

乳管拡張症
にゅうかんかくちょうしょう
Mammary duct ectasia
(女性の病気と妊娠・出産)

どんな病気か

 乳管が病的に拡張したものをいいます。乳頭から分泌物を生じることもあります。中年の女性に多い病気です。

原因は何か

 乳管の拡張を生じる原因はいくつかありますが、大きく分けると乳腺の分泌過剰などの機能的異常に伴うもの、乳管周囲の炎症に伴うもの、そして後述する乳頭腫(にゅうとうしゅ)乳がんなどの腫瘍からの出血が原因になっているものとがあります。

症状の現れ方

 乳管拡張症の多くは無症状です。一部の患者さんでは乳頭から乳汁のような分泌物を生じることがあります。茶褐色、あるいは血液が混じっている場合は、腫瘍が関係している可能性があるので要注意です。乳がん検診などで実施された超音波により、偶然乳管の拡張を指摘されることが多いようです。しかし、これらはいずれも乳管拡張症に特有の症状とはいえません。

検査と診断

 最も簡単なのは超音波検査です。最近の優秀な機器であれば、拡張した乳管を特定することは困難ではありません。しかし、乳管拡張が病的かどうか、また治療を要するかどうかを決めるのは決して容易なことではありません。乳頭に分泌物が認められれば分泌物の細胞診を行い、悪性細胞が存在しないかどうか確認します。そのほか、内分泌的検査(プロラクチン測定)や乳頭分泌の原因になるような薬物胃薬、向精神薬など)を服用していないかどうか確認します。

 閉経期前後であれば内分泌機能の変動が最も原因として考えられますが、乳がんの好発年齢と重なるので注意を要します。原因がはっきりしない場合、とくに腫瘍との関係を否定できない時は、乳腺の生検を行うことがあります。

治療の方法

 非腫瘍性のものであれば、治療はほとんど必要ありません。ただし、乳管拡張症は将来乳がんを発症するリスクがある病変と考えている病理医もいるので、乳がん検診を欠かさず受診することが重要です。良性腫瘍あるいは炎症性のものであることがはっきり確認できれば、これも経過観察でかまいません。悪性腫瘍が原因であれば、根治的な治療を行います。

病気に気づいたらどうする

 乳頭分泌などの自覚症状があれば、外科医診察を受けてください。自覚症状がなくても乳がん検診などで偶然発見されることがありますが、その場合は発見した医師の指示に従います。乳管拡張症を起こす原因が多岐にわたることを知っておくことが大切です。

関連項目

 乳腺症乳管内乳頭腫乳がん

馬場 紀行

出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

家庭医学館 「乳管拡張症」の解説

にゅうかんかくちょうしょう【乳管拡張症 Mammary Duct Ectasia】

[どんな病気か]
 比較的まれな疾患です。なんらかの原因で拡張した乳管へ分泌液(ぶんぴつえき)がたまり、この分解産物の化学的刺激により乳管の周囲に炎症がおこる病気です。乳管拡張症は閉経前後に発症します。
 乳管拡張の原因は、乳管壁が破壊されておこる二次的な変化と考えられます。乳管壁の破壊のおもな原因は、若いときの乳管の慢性炎症で、病気としては慢性乳腺炎(まんせいにゅうせんえん)(「慢性乳腺炎」)が原因の1つと考えられます。なお、授乳との関係は少ないようです。
[症状]
 非周期性の乳腺痛、乳頭(にゅうとう)からの異常分泌、乳頭陥没(にゅうとうかんぼつ)、乳輪下(にゅうりんか)のしこり、皮膚のただれ、へこみ、痛みなどがあります。しこりに触れるとかたく、境界が不明瞭で乳がんに類似しており、その横のわきの下に、腫(は)れたリンパ節を触れることがあります。
 一般に、触診(しょくしん)、理学検査では乳がんとの鑑別が困難なので、外科の乳腺専門医の診察を受ける必要があります。
[治療]
 マンモグラフィー(乳腺X線検査)、超音波検査、乳頭異常分泌液の細胞検査、さらに細菌検査を行なって、確定診断がつけば、拡張あるいは肥厚(ひこう)(厚みを増してふくれた状態)した乳管を含め、病巣(びょうそう)部位を切除します。

出典 小学館家庭医学館について 情報

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