事もなし(読み)コトモナシ

デジタル大辞泉 「事もなし」の意味・読み・例文・類語

こともな・し

何事もない。無事である。
「すべて世は―・し」〈上田敏訳・海潮音・春の朝〉
「―・く生き来しものを老いなみにかかる恋にもあれはあへるかも」〈・五五九〉
無難で欠点がない。非の打ち所もなくすばらしい。
「人にはぬけて、ざえなども―・く」〈・若菜上〉
これということもない。平凡である。
「―・き女房のありけるが」〈著聞集一六
わけもない。容易である。たやすい。
「あづま琴をこそは、―・く弾き侍りしかど」〈手習

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精選版 日本国語大辞典 「事もなし」の意味・読み・例文・類語

こと【事】 も なし

  1. 何事もない。何の支障もない。無事だ。事なし。
    1. [初出の実例]「事毛無(ことモなく)生き来しものを老なみにかかる恋をも吾れは会へるかも」(出典:万葉集(8C後)四・五五九)
  2. 非難すべき点がない。好ましい。理想的だ。
    1. [初出の実例]「そこのとなりなりける宮ばらに、こともなき女どもの」(出典:伊勢物語(10C前)五八)
    2. 「人にはぬけて、ざえなどもこともなく、つひには世のかためとなるべき人なれば」(出典:源氏物語(1001‐14頃)若菜上)
  3. これといってとり立てるところもない。平凡だ。
    1. [初出の実例]「こともなき女房のありけるが」(出典:古今著聞集(1254)一六)
  4. わけもない。たやすい。容易だ。
    1. [初出の実例]「龍(たつ)を捕へたらましかば、又こともなく我は害せられなまし」(出典:竹取物語(9C末‐10C初))

事もなしの語誌

「ことなし(事無)」を「も」で強調したもの。無事平穏の意からの意が生じているが、「源氏物語」では「ことなし」は多く平穏無事の意で、「こともなし」は多く欠点がない、の意で使い分けられている。→「こと(事)むなし」の語誌

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