二重真理説(読み)にじゅうしんりせつ(英語表記)theory of twofold truth

精選版 日本国語大辞典 「二重真理説」の意味・読み・例文・類語

にじゅうしんり‐せつ ニヂュウ‥【二重真理説】

〘名〙 理性的・自然的と、啓示的・宗教的との二種類の真理が並び存するという説。一三世紀頃に唱えられた哲学説の一つで、ラテン‐アベロエス派では、自然的理性によると時間宇宙も永遠であり、能動理性はあらゆる人間共通で一つであり、不死であると説いたが、他方、啓示神学に従い、真理は啓示によるのみであって、時間も宇宙も有限であり、また唯一の能動理性も認められないという見解をも認めた。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「二重真理説」の意味・わかりやすい解説

二重真理説
にじゅうしんりせつ
theory of twofold truth

神学と哲学,啓示と理性,信仰と認識のそれぞれの真理が互いに矛盾することがありうるとする二元論。 13世紀のラテン・アベロイズムがその典型とされる。しかしその代表者シジェ・ド・ブラバンは,哲学とはアリストテレス研究であって,それが信仰と矛盾していてもかまわないと主張したにすぎない。この一派は 1270,77年にパリ司教 E.タンピエによって異端とされた。 14世紀には哲学の厳密性を求めたドゥンス・スコツスが,神の存在や霊魂不滅などの命題を,論証しえないが信仰のうえでは真なるものとして二重真理説の傾向を示した。その立場を明確に打出したのはオッカムで,彼とともに中世的な哲学が終る。なお,教会内部ではあくまでも異端とされるこの立場の最近の例は,A.ロアジらの近代化運動にみられる。

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