五大力菩薩(読み)ゴダイリキボサツ

デジタル大辞泉 「五大力菩薩」の意味・読み・例文・類語

ごだいりき‐ぼさつ【五大力菩薩】

三宝と国土を守護する大力のある五人菩薩金剛吼こんごうく竜王吼無畏十力吼むいじゅうりきく雷電吼無量力吼の五菩薩。
五大力1」に同じ。

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精選版 日本国語大辞典 「五大力菩薩」の意味・読み・例文・類語

ごだいりき‐ぼさつ【五大力菩薩】

  1. [ 1 ] 仏語。三宝を護持し、正法を建立する国を守護する五人の大力ある菩薩。旧訳の仁王経では、金剛吼(く)・龍王吼・無畏十力吼・雷電吼・無量力吼の五菩薩。新訳の仁王護国経では(東)金剛手・(南)金剛宝・(西)金剛利・(北)金剛薬叉・(中)金剛波羅蜜多の五菩薩。五大力。
    1. [初出の実例]「受戒之後、更帰本寺、於五大力菩薩前、令止観業者、転読仁王般若経真言業者、三時念持、不断誓護」(出典:日本三代実録‐元慶元年(877)一二月九日)
    2. [その他の文献]〔仁王経‐下〕
  2. [ 2 ] 〘 名詞 〙 ( [ 一 ]の力により書状が無事に先方に届くという俗信から ) 遊里などで主に女性が書状の封じめに記した語。五大力。
    1. [初出の実例]「女の文の裏書に五大力(ボサツ)とかく事、むかしより見付侍れど、いかなる故ともしらす」(出典:評判記・色道大鏡(1678)九)

五大力菩薩の語誌

菩薩像としては異例な火焔を背負った忿怒相で描かれる。中世には、五大力菩薩が天災地変や疫病などを除くという信仰が一般に広がり、その図像守り札として門戸に貼られるようになった。さらに五大力菩薩と記した紙が盗難よけの守り札とされたり、遊女たちが手紙の封に記したりする習慣もおこった。

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改訂新版 世界大百科事典 「五大力菩薩」の意味・わかりやすい解説

五大力菩薩 (ごだいりきぼさつ)

《仁王般若波羅蜜経》に説かれる五尊の菩薩の総称。三宝を受持する国王があれば,その国を守りに行くと記されており,仁王会(にんのうえ)の本尊としてまつられた。仁王経には新旧二つの訳があり,旧訳(鳩摩羅什訳)では,金剛吼菩薩,竜王吼菩薩,無畏十力吼菩薩,雷電吼菩薩,無量力吼菩薩という五尊の名と,各尊の持物が述べられているが,新訳(不空訳)では旧訳とは異なる菩薩名を掲げ,しかも五尊を五方(中東南西北)に配置している。それを旧訳と対比させると金剛吼菩薩-中方・金剛波羅蜜多菩薩,竜王吼菩薩-南方・金剛宝菩薩,無畏十力吼菩薩-東方・金剛手菩薩,雷電吼菩薩-北方・金剛薬叉菩薩,無量力吼菩薩-西方・金剛利菩薩となる。五方に配置された五大力菩薩は,五大明王との対応が説かれ,密教との関係が強まる。作例には高野山の有志八幡講十八箇院にある巨幅の画像3幅(平安時代,国宝)があり,その他,高野山の北室院の五大力菩薩を一幅に描いた画像は火焰光背を伴う忿怒尊の姿に表現されており,密教との関連が強くなってから作り出された形式と考えられる。
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五大力菩薩 (ごだいりきぼさつ)

説経節の曲名武蔵権太夫正本で元禄(1688-1704)後期の成立。六段構成。摂州住吉の神宮寺・つも寺の薬師如来の由来を語る形式で始まり,衆病悉除(しつじよ)に効ある五大力菩薩の霊験をたたえたもの。薬師如来の安置をめぐる善臣悪臣の対立抗争に邪恋を絡ませたお家騒動ものの一つで,忠臣刑部とその妻子の別れを扱った愁嘆の場に説経らしい情念がある。山本角太夫に,同材の古浄瑠璃の正本がある。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「五大力菩薩」の意味・わかりやすい解説

五大力菩薩
ごだいりきぼさつ

五大力吼,五大力尊ともいう。密教で信仰される。仏法を護持する国王を守る忿怒形の菩薩で五方に配置される。中央の金剛吼,東方の無畏十力吼,南方の竜王吼,西方の無量力吼,北方の雷電吼の五尊で,その画像は奈良時代以来,仁王会の本尊として用いられた。最古の遺例として 10世紀の高野山有志八幡講十八箇院蔵本があり,中尊の金剛吼像と,無畏十力吼,竜王吼像の3幅 (2幅は焼失) は,いずれも大画面いっぱいに威圧的な像容をもって描き出されている。

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世界大百科事典(旧版)内の五大力菩薩の言及

【封】より

…近世になって発達した割印,押切印,千鳥印なども,この継目裏印の延長として理解できよう。継目裏印には〈五大力菩薩〉の印文をもつものがあり,封印に呪力が期待されていたことを物語っている。〈封じ目菩薩〉と呼ばれることもあったこの名号は,戦国から江戸時代にかけて書状の封じ目に書かれることがあったが,これは封じた内容を改変から保護する力がこの菩薩にあると信じられていたからである。…

※「五大力菩薩」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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