岩石が外界と物質の交換をすることで,その化学成分を変化させる作用のこと。交代作用には2通りの意味がある。一つは小規模な交代作用で,岩石に含まれている鉱物が化学成分を異にする他の鉱物に置き換えられるプロセスを意味し,他は大規模な花コウ岩体(バソリス)や花コウ岩質地殻の成因を説明しようとする花コウ岩化作用説に用いられる交代作用を意味する。前者の交代作用は広く認められているが,後者の意味の交代作用は証明が一般に困難な考え方で,今日ではその作用の存在を疑う人が多い。変成作用に伴う交代作用は普通に見られ,その代表的な例は接触変成作用を受けた石灰岩に見られるスカルン鉱床である。そこでは高温の水溶液と方解石が反応して,方解石が磁鉄鉱などの酸化物やザクロ石などのケイ酸塩鉱物に置き換えられている。変成作用では,岩石に含まれていた既存の鉱物が水溶液や他の鉱物と反応し,新しい鉱物に変化するので小規模な交代作用はほとんど必ず起こっているといってよい。交代作用の物質の出入りには三つのプロセスが考えられる。一つは気体中に原子やイオンが溶け,それが移動する場合であり,二つは液体によって移動する場合であり,3番目は気体や液体など流体によらず結晶中や境界にそってイオンや原子が拡散する場合である。3番目の固体中の拡散による物質の移動距離は一般に高温下でさえも著しく小さい。そこで第1と第2の流体を介在する交代作用が最も起こりやすいプロセスだと考えられる。堆積岩はもちろん変成岩や火成岩でも,岩石試料の両端に異なる圧力の水を接触させると,圧力差に応じて岩石試料中を水がわずかではあるが流れる。これは岩石を構成している鉱物粒子間にわずかではあるがすきまがあることによる。流体に溶けているイオンや原子は,流体中の拡散によるだけではなく,流体の流れにのって移動する。移動する流体は既存の鉱物を溶かし,そこに他の化学成分の鉱物を沈殿させることによって交代作用を起こすと考えられる。したがって低温下の交代作用は変質作用や風化作用と同様なプロセスである。
執筆者:鳥海 光弘
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岩石の変成作用に際して、原岩の化学組成が著しく変化する現象。たとえば、火成岩の貫入によって接触変成作用を受けた石灰岩層に、緑簾(りょくれん)石、透輝石、カルシウムざくろ石などからなる岩石が生じたり、蛇紋岩中に取り込まれた玄武岩や斑糲(はんれい)岩が、ハイドロざくろ石やベスブ石などからなる岩石に変化するのは交代作用である。また、泥岩中に挟まれた石灰岩の薄層が、変成作用に際して泥岩と反応し、両者の間に角閃(かくせん)岩質の部分ができるような現象も一種の交代作用とされている。花崗(かこう)岩のなかには、泥岩が広域変成作用を受けたときに、大規模な交代作用がおこったために生成したものがあるという説があるが、確かではない。
[橋本光男]
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変成作用の推進力となる因子に,熱と圧力と化学的に活性な流体の三つがある.なかでも第三番目の要因はもっとも重要なものである.このような流体がある岩体のなかに侵入して,物質を加えたり除いたりして岩体の総化学組成を変化させるとき,その過程を交代作用とよぶ.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
…マグマの活動により発生する高温の鉱化流体が岩石中を移動・上昇するときに,石灰岩やドロストーンの中を通過すると化学的に反応して,これらの岩石をケイ酸塩鉱物の集合体で置き換えてしまう。このような地質現象は交代作用とよばれ,新しく生成したケイ酸塩鉱物よりなる岩石はスカルンとよばれる。この際,鉱化流体中に溶存していた鉄,銅,亜鉛,鉛,タングステン,モリブデン,スズなどの有用金属も,硫化物や酸化物として沈殿して鉱床をつくる。…
※「交代作用」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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