交代作用(読み)コウタイサヨウ(英語表記)metasomatism

デジタル大辞泉 「交代作用」の意味・読み・例文・類語

こうたい‐さよう〔カウタイ‐〕【交代作用】

岩石中に浸透してきたガスや熱水溶液により、既存の岩石の成分と移動してきた物質とが置換され、新しい鉱物ができる作用。→熱水鉱床

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精選版 日本国語大辞典 「交代作用」の意味・読み・例文・類語

こうたい‐さようカウタイ‥【交代作用】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 既存の鉱物または鉱床が、地下深所のガスや熱水溶液の浸入により溶解沈殿、置換交代などの化学作用を受け、化学組成の異なる新しい鉱物または鉱床となること。
  3. 岩石の変成作用で、外部から他の物質が加わり、原岩の化学組成などが変化していくこと。

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改訂新版 世界大百科事典 「交代作用」の意味・わかりやすい解説

交代作用 (こうたいさよう)
metasomatism

岩石が外界と物質の交換をすることで,その化学成分を変化させる作用のこと。交代作用には2通りの意味がある。一つは小規模な交代作用で,岩石に含まれている鉱物が化学成分を異にする他の鉱物に置き換えられるプロセスを意味し,他は大規模な花コウ岩体バソリス)や花コウ岩質地殻の成因を説明しようとする花コウ岩化作用説に用いられる交代作用を意味する。前者の交代作用は広く認められているが,後者の意味の交代作用は証明が一般に困難な考え方で,今日ではその作用の存在を疑う人が多い。変成作用に伴う交代作用は普通に見られ,その代表的な例は接触変成作用を受けた石灰岩に見られるスカルン鉱床である。そこでは高温の水溶液と方解石が反応して,方解石が磁鉄鉱などの酸化物やザクロ石などのケイ酸塩鉱物に置き換えられている。変成作用では,岩石に含まれていた既存の鉱物が水溶液や他の鉱物と反応し,新しい鉱物に変化するので小規模な交代作用はほとんど必ず起こっているといってよい。交代作用の物質の出入りには三つのプロセスが考えられる。一つは気体中に原子イオンが溶け,それが移動する場合であり,二つは液体によって移動する場合であり,3番目は気体や液体など流体によらず結晶中や境界にそってイオンや原子が拡散する場合である。3番目の固体中の拡散による物質の移動距離は一般に高温下でさえも著しく小さい。そこで第1と第2の流体を介在する交代作用が最も起こりやすいプロセスだと考えられる。堆積岩はもちろん変成岩火成岩でも,岩石試料の両端に異なる圧力の水を接触させると,圧力差に応じて岩石試料中を水がわずかではあるが流れる。これは岩石を構成している鉱物粒子間にわずかではあるがすきまがあることによる。流体に溶けているイオンや原子は,流体中の拡散によるだけではなく,流体の流れにのって移動する。移動する流体は既存の鉱物を溶かし,そこに他の化学成分の鉱物を沈殿させることによって交代作用を起こすと考えられる。したがって低温下の交代作用は変質作用風化作用と同様なプロセスである。
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岩石学辞典 「交代作用」の解説

交代作用

変成作用で一般に行われる現象で,岩石の原岩の総化学組成が外部から揮発成分や溶液などの物質が導入あるいは放出されて変化し,本来あった物質が化学反応によって別の異なった化学組成の鉱物で置換される過程.交代作用で形成された岩石は,成分の移動によって元の岩石の化学組成が非常に変化するが,もともとの岩石の組織が残っていることもある[Naumann : 1826, Lindgren : 1912].鉱床生成の場合には鉱物または岩体の形をほぼ残して,化学組成の異なる鉱物または岩石に置換される作用をいう[片山ほか : 1970].交代作用は一般に接触変成作用や深部における変成作用など高い温度や圧力の条件下の変成作用に伴われる.交代作用の起こる過程では溶融体などの存在は必要ないが,全体の系は開放されている必要がある[鈴木 : 1994].

交代作用

(1) 物質が他の物質によって置換される作用.鉱物または岩石の形をほぼ残して,化学組成の異なる鉱物または岩石に置換される作用.(2) 交代作用(metasomatism)(3.1.1(4))と同義に用いる.

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「交代作用」の意味・わかりやすい解説

交代作用
こうたいさよう
metasomatism

岩石が外から加わった物質と反応して,化学組成が変る作用の総称。火成岩,変成岩,鉱床の成因や変成作用の場合に用いる。鉱床の生成過程では,鉱物や岩石の形が変らないのに,化学組成が異なるものに置き換えられる作用をいう。接触変成作用では,花崗岩からマグマの分化末期に濃集した成分が母岩に入って,母岩の化学組成を交代する場合にきわめて多く,特に母岩が石灰岩のときに接触部にできるスカルンを伴う鉱床は,顕著な例である。交代作用の機構や状態に関しては定説がなく,物質がイオンや分子状態で拡散するという説や,ガス体や熱水溶液の作用によるとする説などがある。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「交代作用」の意味・わかりやすい解説

交代作用
こうたいさよう

岩石の変成作用に際して、原岩の化学組成が著しく変化する現象。たとえば、火成岩の貫入によって接触変成作用を受けた石灰岩層に、緑簾(りょくれん)石、透輝石、カルシウムざくろ石などからなる岩石が生じたり、蛇紋岩中に取り込まれた玄武岩や斑糲(はんれい)岩が、ハイドロざくろ石やベスブ石などからなる岩石に変化するのは交代作用である。また、泥岩中に挟まれた石灰岩の薄層が、変成作用に際して泥岩と反応し、両者の間に角閃(かくせん)岩質の部分ができるような現象も一種の交代作用とされている。花崗(かこう)岩のなかには、泥岩が広域変成作用を受けたときに、大規模な交代作用がおこったために生成したものがあるという説があるが、確かではない。

[橋本光男]

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百科事典マイペディア 「交代作用」の意味・わかりやすい解説

交代作用【こうたいさよう】

岩石中に浸透してきた液体の化学作用で,岩石の鉱物成分が移入物質と置換され新しい鉱物ができる作用。たとえば,ケイ酸分を溶かした熱水の交代作用でほとんど石英だけからなる岩石ができるケイ化作用,あるいは石灰岩と交代してスカルン鉱物を生じるスカルン化作用など。交代作用で生じる鉱床は交代鉱床と呼ばれ,熱水鉱床接触交代鉱床などがある。

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化学辞典 第2版 「交代作用」の解説

交代作用
コウタイサヨウ
metasomatism

変成作用の推進力となる因子に,熱と圧力と化学的に活性な流体の三つがある.なかでも第三番目の要因はもっとも重要なものである.このような流体がある岩体のなかに侵入して,物質を加えたり除いたりして岩体の総化学組成を変化させるとき,その過程を交代作用とよぶ.

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世界大百科事典(旧版)内の交代作用の言及

【接触交代鉱床】より

…マグマの活動により発生する高温の鉱化流体が岩石中を移動・上昇するときに,石灰岩やドロストーンの中を通過すると化学的に反応して,これらの岩石をケイ酸塩鉱物の集合体で置き換えてしまう。このような地質現象は交代作用とよばれ,新しく生成したケイ酸塩鉱物よりなる岩石はスカルンとよばれる。この際,鉱化流体中に溶存していた鉄,銅,亜鉛,鉛,タングステン,モリブデン,スズなどの有用金属も,硫化物や酸化物として沈殿して鉱床をつくる。…

※「交代作用」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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