人食い妹(読み)ひとくいいもうと

改訂新版 世界大百科事典 「人食い妹」の意味・わかりやすい解説

人食い妹 (ひとくいいもうと)

日本の昔話としては〈妹は鬼〉ともいい,九州,とくに鹿児島県に多く分布している。妹が夜中に外出するのを知った兄が後をつけると,妹は馬を食ったので,親に妹は鬼だと警告する。親は逆に怒り,兄を追放する。兄がしばらくして家に戻ってみると,村に人影はなく,家には妹だけがいて,茶を入れる間,太鼓を打ちながら火の番をしろという。兄がそのとおりにしていると,両親白鼠になって現れ,代りに尻尾で太鼓を打ってやるから逃げろという。兄が逃げて大木に登ると,妹が追ってきて木を倒しそうになるが,兄が扇で虎を招き寄せ,救われる。白鼠は祖霊信仰と関係があると考えられる。この話は朝鮮半島でも伝えられており,妹に追われたとき,兄が後方に魔法的障害物を投げて逃げる。インドでも伝えられている。ヨーロッパにも,〈妹の裏切り〉として伝えられる話があるが,多少の差異がある。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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