仕着(読み)しきせ

改訂新版 世界大百科事典 「仕着」の意味・わかりやすい解説

仕着 (しきせ)

四季施,為着とも書く。江戸時代,幕府が諸役人,例えば同朋,右筆,賄調役,数寄屋坊主などへ時候に応じて衣服を与えたこと,もしくは与えた衣服をいう。一部が代金で与えられる場合もあった。また商家や農家でも奉公人に仕着が与えられた。江戸時代の商家では,丁稚(でつち),小僧は12,13歳で雇い入れられたが,その後約10年間,元服して手代となるまでは給金は与えられず,仕着と食事および若干のこづかいが与えられるだけであった。仕着としては綿服,帯,じゅばん,前垂れ,下駄などが与えられた。奉公人請状に仕着のことが定められることが少なくなく,例えば1845年(弘化2)大坂肥料問屋の炭屋の奉公人請状には〈夏は布帷子,冬は木綿布子二季御仕着〉とある。この言葉はのちに転じて,〈御仕着〉といえば型どおり事を行うこと,という意味にも使われるようになった。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の仕着の言及

【制服】より

…多くの場合,その目的に応じて材質,色,付属品なども統一されている。制服には,季節に応じて主人が奉公人などに与えた衣服,〈仕着(しきせ)〉と共通性があるが,〈仕着〉には画一性が意識されていない点で大きく異なる。 制服のもたらす社会的機能としては,同一性,シンボル性,禁欲性の三つの要因が考えられる。…

【丁稚】より

…この時代になるとまず半人前とみなされ,荷造りそのほか荷物,金銭の授受など手代(てだい)の業務を手伝わせたが,なお家事の雑役をも兼ねた。主人は丁稚の衣食住はもとより,その教育,監督,病気の治療いっさいの責任を負う代りに,丁稚は無給で,ただ盆と正月の2回,主人から綿服,帯,じゅばん,前垂れ,下駄の仕着せと若干のこづかい銭を与えられるにすぎなかった。しかも酒,タバコは禁ぜられ,衣服は必ず木綿物を着,羽織の着用はとめられ,履物は雪駄,木履のほか,駒下駄,表つきの下駄を履くことを許されず,夜は業務の暇に読み書きそろばん,手習いをした。…

※「仕着」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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