三重県中東部、伊勢神宮を中心とする地域と志摩半島、熊野灘(くまのなだ)沿岸からなる国立公園。1946年(昭和21)指定、1977年南島(なんとう)町(現南伊勢町)地区を追加。面積555.44平方キロメートル。この公園の特色は、地形的には日本でも代表的な屈曲の多いリアス海岸と、その背後に展開する標高30~50メートルの広い海成段丘からなる平坦(へいたん)面(隆起海食台地)の存在で、横山(203メートル)、金比羅(こんぴら)山(99メートル)などの孤立した山頂からの景観は女性的な美しさである。植生的には伊勢市の神宮林の暖帯性常緑広葉樹林と志摩海岸の暖地性植物群落が貴重である。とくに神宮林は千古斧(おの)を入れぬ広い天然林で、シイ、カシ、サカキなど、この地方の森林生態を残し、またトキワマンサク、ドウダンツツジなどの自生地もあり、学術上興味深い。観光的には二つの面をもつ。一つは伊勢神宮とその付属施設で、日本文化の伝統の集積がみられる。もう一つは志摩地区の海岸で、的矢(まとや)湾、英虞(あご)湾、五ヶ所(ごかしょ)湾などには、内海の自然景観と真珠養殖、海女(あま)漁業などを含む沿岸漁村の産業・民俗景観があり、先志摩(さきしま)の太平洋岸では断崖(だんがい)と岩礁に荒波が砕ける男性的な美しさもある。近畿日本鉄道が英虞湾の中心賢島(かしこじま)へ通じ、伊勢自動車道、伊勢志摩スカイライン、伊勢道路、志摩パールロード、伊勢湾フェリーや高速船の就航など交通の便がよく、ホテル、民宿、レジャーランド、ゴルフ場などの施設も整い、海外からの観光客も多い。
[伊藤達雄]
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