佐用都比売命(読み)さよつひめのみこと

朝日日本歴史人物事典 「佐用都比売命」の解説

佐用都比売命

播磨国風土記』に登場する神。伊和大神の妹に当たり,別名は玉津日女命。昔,伊和大神と玉津日女命の兄妹が国の占有を争ったとき,妹が鹿の腹を割いてその血を用いて稲を蒔いたところ,一夜にして苗が生えたので,兄は「五月夜に植えたな」といって別地へ去った。それで,そこを五月夜郡と呼び,妹の神を賛用都比売命と呼ぶようになった,という地名起源説話が讃容郡の条の冒頭にみえる。この説話の背景については,穀物の種を動物の血に漬けて豊作を願う呪術を反映するものだとみる説,殺された大宜都比売あるいは保食神の死体から五穀その他の有用物が生じたという,『古事記』『日本書紀』にみえる農耕起源神話に系統的につながるものだとみる説などがあるが,後者の考え方が妥当だろう。

(佐佐木隆)

出典 朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版朝日日本歴史人物事典について 情報

デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「佐用都比売命」の解説

佐用都比売命 さよつひめのみこと

播磨(はりま)国風土記」にみえる神。
兄の伊和大神(いわのおおかみ)と国の占有をめぐってあらそったとき,鹿の血をもちいて稲の苗を一夜でそだて,兄神に勝ったという。農業女神とされる。また播磨(兵庫県)佐用郡の名はこの神に由来するという。別名に玉津日女命(たまつひめのみこと)。

出典 講談社デジタル版 日本人名大辞典+Plusについて 情報 | 凡例

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