佐貫石仏
さぬきせきぶつ
[現在地名]塩谷町佐貫 岩戸脇
鬼怒川左岸に切立つ石英粗面岩に彫られた線刻の磨崖仏で、佐貫観音と通称される。国指定史跡。本像は智拳印を結ぶ金剛界の大日如来坐像で、像高は約一八・二メートル、顔面の長さ三メートル、顔幅一・六四メートルの巨像である。露頭の磨崖仏は長年の風化・浸食を受け全容は明瞭ではないが、かすかに宝冠や瓔珞・白毫相などが認められる。蓮台座の高さは八葉それぞれ差はあるが、平均して三・三メートル強である。線刻の幅は四・五―六・一センチ、深さは三―四・五センチ。造像年代は一般に平安時代とみられている。なお奥院から明治一二年（一八七九）開帳のときに取出された銅版曼荼羅の裏面に、「下野国 氏家郡讃岐郷巌堀 修造事 勧進沙門満阿弥陀仏 大檀那右兵衛尉橘公頼 建保五丁丑二月彼岸第三日 金銅仏奉堀 出畢」と陰刻されている。
出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報
さぬきせきぶつ【佐貫石仏】
栃木県塩谷郡塩谷町佐貫にある磨崖仏(まがいぶつ)。鬼怒(きぬ)川上流の左岸に切り立つ石英粗面岩の岩壁に線刻されている石仏は、金剛界の大日如来像。智拳(ちけん)印を結んでおり、石仏の右上に、観音を安置するためのものとされる大悲窟と呼ばれる小さな洞窟がある。石仏は宝冠の頂部から蓮華座の下端までの総高が18.2mと巨大で、顔面の長さが約3m、幅は約1.6mあり、蓮華座には八葉が彫られている。長年の風化、浸食、苔の付着で全容は明確ではないが、線刻の太さは約4.5～6.1cm。造像時期は一般的に平安時代とされているが、鎌倉時代初期という説もある。1926年（大正15）に国の史跡に指定された。JR東北新幹線ほか宇都宮駅から関東バス「佐貫観音前」下車、徒歩約5分。
出典 講談社国指定史跡ガイドについて 情報
