何彼無(読み)なにかなし

精選版 日本国語大辞典 「何彼無」の意味・読み・例文・類語

なにか‐なし【何彼無】

〘副〙 (「なにがなし」とも。「に」を伴うこともある)
① 種々様々の状態とならないさま。あれこれ言うことなしに。あれこれ迷うことなしに。
浮世草子・好色一代男(1682)五「まづ咄す事もある、此舟へといふ。何角(ナニカ)なしに、乗うつりて、皆こころやすきつき合」
滑稽本東海道中膝栗毛(1802‐09)五上「いやいやめんどふだ、何かなし壱貫五百よりまからぬまからぬ」
② はっきりとした理由もないさま。どうというわけもなく。ともかく。
※浄瑠璃・冥途の飛脚(1711頃)上「そなたへ渡る江戸金がふらりと上るを何かなしに、懐に押込んで新町迄一さんに」
たけくらべ(1895‐96)〈樋口一葉〉九「勘定しらずの若い者など、何(ナニ)がなしに寄って」
[補注]本来は「なにかなし」であろうが、何が原因だということもなしに、といった意味に感じられる所から、「なにがなし」という形を生み出した。②の用法は①以上に、「なにがなし」の形となりやすい。

なにか‐な・し【何彼無】

〘形ク〙 (「なにがなし」とも) これといったはっきりしたわけもない。
油地獄(1891)〈斎藤緑雨〉一三「振り返り勝に何(ナニ)かなく両国橋の上まで来て」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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