使用済み核燃料(読み)しようずみかくねんりょう

共同通信ニュース用語解説 「使用済み核燃料」の解説

使用済み核燃料

原発で使い終わった核燃料は強い放射線や高い熱を出すため、原発のプールに貯蔵し年単位で冷却を続けている。政府全量を再処理して燃料として再利用する「核燃料サイクル」を進めているが、中核となる青森県六ケ所村の再処理工場は完成していない。各地の原発では保管場所が逼迫ひっぱくしており、電力各社は原発内で金属製の容器に保管して自然冷却する「乾式貯蔵」や、プール内の燃料の間隔を詰めて貯蔵容量を増やす「リラッキング」などの対策を進めている。

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百科事典マイペディア 「使用済み核燃料」の意味・わかりやすい解説

使用済核燃料【しようずみかくねんりょう】

原子炉で使用された後の核燃料棒で,ウランプルトニウムを大量に含む,きわめて高いレベルの放射性廃棄物。原発などから大量に廃棄されるが,その危険性と処理の難しさから,処理が世界的な問題となっている。使用済燃料から,ウランやプルトニウムを抽出して核兵器製造に転用することも可能。原子炉で使用された使用済燃料棒は,通常,原子炉内の貯蔵プールで数年冷却保管され,その後核燃料サイクルで使われるために再処理過程に回される。2011年3月の東京電力福島第一原発の大事故では,原子炉の全電源喪失から原子炉の炉心冷却装置・非常用炉心冷却装置・冷却水巡回系が稼働しなくなり,原子炉および使用済核燃料の貯蔵プールの水位が低下。1〜6号機まである同原発の全基のプールにある核燃料集合体は計4546本。定期検査中で炉内の燃料がすべてプールに移されていた4号機では,核燃料プール付近で水素爆発が原因とみられる火災を起こし,プールの水位が下がって使用済核燃料が露出し,水素が発生して爆発,さらに燃料が大きく損傷したとみられている。大量の放射性物資が大気中に放出された。放射能の大漏洩である。また原発敷地内できわめて高い放射線を出し続けた。貯蔵プールに水を補給する冷却システムが働かず,燃料の熱で水が蒸発しさらに過熱した燃料が損傷する恐れがあることから,東京電力は外部から貯蔵プールに海水などを大量に投入,使用済核燃料棒を水没させる方策がとられた。爆発で建屋が崩壊した他の使用済核燃料貯蔵プールにも同様の方策がとられた。2011年12月,野田首相は事故の収束を宣言したが,敷地内の大量の汚染された瓦礫の撤去はもちろん建屋の解体を進めたうえで,核燃料取扱機などを内蔵し建屋から独立した骨組みを設置しなければならず,使用済み核燃料の取り出し作業は2013年11月に着手。2014年12月には4号機の取り出しは完了したものの1〜3号機については燃料が溶解しデブリ状態となっているため,今後30〜40年かけて作業を行っていく。

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知恵蔵 「使用済み核燃料」の解説

使用済み核燃料

原子炉で大体において3年間燃やしたあと取り出した核燃料。通常、原子炉内の燃料は1回に3分の1から4分の1くらい取り替える。取り出したときの燃料中の成分比は、最初は3〜5%だった核分裂するウラン(U)235が1〜0.8%に減り、核分裂生成物が約1%、プルトニウム(PU)が約1%になる。110万kW級の原子炉からは、年間約30t(ウラン重量)が出る。放射能が非常に高い。電気事業連合会の調べでは、2006年3月末で全国の原発敷地内には約1万1520t(ウラン重量)の使用済み核燃料が貯蔵されている。全原発の総貯蔵容量は約1万7540tで、容量の小さな原発では限界に近づきつつある。毎年の発生量は約1000tだが、青森県六ケ所村で試運転中の再処理工場の処理能力は年間800t。このため、電力会社は発電所内で20〜30年間貯蔵する方針を打ち出した。発電所敷地以外での中間貯蔵施設の建設計画も進んでいる。

(渥美好司 朝日新聞記者 / 2008年)

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世界大百科事典(旧版)内の使用済み核燃料の言及

【核燃料】より

…原子燃料ともいい,原子力のエネルギーを原子炉によって利用する際,エネルギーを発生する源になるものをいう。核融合反応を利用する核融合炉での使用が想定される重水素,三重水素なども広義には含むが,一般には核分裂反応を利用する原子炉で使用するもののみをいい,ウランU,プルトニウムPu,トリウムThのいずれか一つ,またはその組合せである。 ウランのおもな同位体はウラン238 238Uとウラン235 235Uであって,それぞれ天然存在比は99.27%と0.72%である。…

【核燃料サイクル】より

…原子力をエネルギーとして利用するために用いられるウランUの一生を核燃料サイクルという。原子力には核分裂エネルギーと核融合エネルギーとがある。核分裂エネルギーの利用では,燃料にはウラン以外にもトリウムThが考えられ,また核融合エネルギーの利用で考えられている燃料は水素の同位体である重水素2H(ジュウテリウム)と三重水素3H(トリチウム)である。これらの燃料についても核燃料サイクルという言葉を用いることがあるが,現実にはまだ利用されていないので,今日では核燃料サイクルといえばウランについてのサイクルを意味する。…

【核燃料再処理】より

…原子炉の使用済燃料の中から核燃料物質を回収することをいい,あるいは使用済燃料再処理,または単に燃料再処理ということもある。核燃料が原子炉で使用されると,(1)核分裂生成物がしだいに蓄積してきてこれによる中性子吸収が増加し炉の運転が難しくなる,(2)核分裂生成物の蓄積や放射線損傷により核燃料の機械的性質などが変化し燃料体が損傷するおそれがある――ために,ある期間使用したあとはこれを取り出し新しい核燃料と交換する。…

※「使用済み核燃料」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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