翻訳|mooring
浮遊する物体を,索や鎖により大地に直接または間接につなぎとめること。係留用の索や鎖の一端は水底や陸上の大地もしくは杭などの大地固定物,または係留された他の物体に固定され,他端は被係留物体上に固定される。しかしこの端部における固定は一般的には半永久的なものではない。ここでは最も重要な船の係留について述べる。
貨客の積卸しおよび乗降を行うため,またはその他の目的で船が係留する施設として,岸壁,係船浮標(ブイ),係船杭,桟橋,浮桟橋などがあり,これらには船を安全,確実に係留するために防衝設備,係船柱,係船環などの付帯設備が設けられている。また船上の施設(係船設備)としては,係留用の索や鎖を巻くウィンドラスやウィンチのほか,鎖や索を導いたり船上に固定するためのフェアリーダー,ボラード,ビットなどの設備がある。
船においては係留という用語は狭義に用いられ,錨(いかり)を用いてつなぎとめる錨泊(びようはく)と区別している。
(1)係留 船で係留という場合は索や鎖により大地もしくは大地固定物である岸壁,係船杭,桟橋などの施設に船を直接につなぎとめたり,あるいはそれ自体が錨や錘(おもり)あるいは索や鎖により係留されている浮桟橋,係船浮標などの施設につなぎとめることをいい,このうち係船浮標に係留することを浮標係留,それ以外を係岸と呼ぶ。係岸の場合には主としてワイヤロープや繊維ロープが係留索として使用されるが,接岸および離岸の際の操船のためや,また船体運動を抑えて貨物の積卸し,人間の乗降および船と係留施設の安全を確保するために,係留索は通常複数本使用される。浮標係留の場合には錨鎖が主として係留鎖として利用され,操船用には鋼索が使用される。
(2)錨泊 自船の錨を使用して錨鎖により船を直接に水底に係留した状態をいい,錨の使用個数と方法により,単錨泊,双錨泊,二錨泊に分けられる。1個の船首錨を用いる単錨泊は,投揚錨のための操作や操船が簡単であり他の錨泊法への変更も容易であることからもっとも一般的であるが,風や潮の変化により船首が錨を中心とし錨鎖長を半径とする水域内で移動するため,この方法で錨泊するには広い水域を必要とする。2個の船首錨を使用しそれぞれの錨鎖を船首を中心としてほぼ対称に伸出する双錨泊は,風や潮の変化による船首の移動がきわめて小さい錨泊法であるが,投揚錨操作や操船は複雑となる。2個の船首錨を使用する双錨泊以外の錨泊法を二錨泊という。二錨泊は大きな錨の把持力が得られ,風や潮による船体の移動を抑制できるため,台風などの強風をしのぐ係留方法として最適である。そのため台風などで強風が予想される場合,船舶は一般的には係留方法を他の方法(係岸,浮標係留,単錨泊,双錨泊など)から,広い水域での二錨泊に変更する。
執筆者:鶴田 三郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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