輸血用血液は,採取した血液に抗凝固剤であるACD液またはCPD液(いずれもクエン酸,クエン酸ナトリウム,ブドウ糖からなり,後者にはリン酸水素ナトリウムNaH2PO4が加わる)を加え,主として赤血球の代謝を抑えるために4~6℃で保存されるが,保存血には全血と濃厚赤血球が含まれるが,現在濃厚赤血球は全血よりバフィコート(白血球と血小板を含む成分),血漿のほとんどを除き,新しい保存液MAP液(マニトール,アデニン,フォスフェート)を加えた赤血球MAPを指す。したがって採血後21日目までのこれらの輸血用血液の名称である。輸血用血液の有効保存期間が21日間というのは,輸血された赤血球の少なくとも70%が受血者の循環系内で24時間生存することを指標にして定められた日数である。
保存血輸血の有利な点は,トレポネマ,トキソプラズマ,サイトメガロウイルスなどの感染性が失われているために梅毒感染などの危険がないこと,また,含まれるリンパ球の活性が保存とともに低下するので,採血直後の血液に比べ輸血後GVHDの危険が少ない。しかし抗凝固剤を加えて一定温度条件で21日間保存するので,時間の経過とともに生物学的特性に種々な変化が生じてくる。赤血球機能の低下は徐々であるが,血小板は48時間もすると止血作用としての効果が減少し,白血球とくに顆粒球も急速にその機能を失う。これら血小板や白血球は保存中に多数の微細凝集塊をつくり,この凝集塊は肺などの毛細管にひっかかって輸血の副作用の原因ともなる。血漿中の重要な変化は,血液凝固第Ⅴおよび第Ⅷ因子の消失,カリウムの増加,乳酸やアンモニアなどの濃度の上昇,血漿のpHの低下などがみられることである。
従来は貧血や手術に際してこの保存血でも全血輸血が行われていたが,現在では患者に必要な成分のみを輸血する赤血球MAPが使われている。
→輸血
執筆者:湯浅 晋治+関口 定美
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...
11/21 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
10/29 小学館の図鑑NEO[新版]動物を追加
10/22 デジタル大辞泉を更新
10/22 デジタル大辞泉プラスを更新
10/1 共同通信ニュース用語解説を追加