先天性疾患(読み)せんてんせいしっかん

日本大百科全書(ニッポニカ) 「先天性疾患」の意味・わかりやすい解説

先天性疾患
せんてんせいしっかん

出生時から存在する形態的、機能的、精神的異常を示す疾患の総称名であり、先天異常とよばれることもある。先天性疾患には、形態の異常、機能の異常、代謝の異常などをそれぞれ主とする疾患が存在するため、きわめて多種多様な形で現れる。そのなかで、組織、臓器系統個体といった、それぞれのレベルにおける形態異常をとくに奇形と一括している。世界保健機関(WHO)の国際疾病分類には約600種があげられている。父母祖先の種々な性質が子孫に伝えられることはよく知られていることであるが、先天性疾患の発生には、病的素因が父母やその祖先から伝えられる、つまり遺伝性素因が重要とされている。これら疾患に、血友病、色覚異常、夜盲、青色鞏膜(きょうまく)(強膜)、白皮症、小頭症、多指症、先天性魚鱗(ぎょりん)症などが含まれている。また染色体の異常によるものとしては、性染色体異常のクラインフェルターKleinefelter症候群、ターナーTurner症候群、および常染色体異常のダウンDown症候群などが有名である。さらに、一つ遺伝子が一つの酵素に関与することが証明されて以来、知的障害診断に利用されているフェニルケトン尿症などの先天性代謝異常も最近では臨床的に重視されている。

渡辺 裕]

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