( 1 )漢語としては、①の意であるが、平安時代後期以降、修験道が盛んになるにつれ、②の意で広く使用されるようになった。
( 2 )読みについて、古辞書の類では「色葉字類抄」には「センタツ」とあるが、中世には、「達」字の入声韻尾の表記の揺れを反映して「センダチ」とあるもの(「下学集」「文明本節用集」「伊京集」「饅頭屋本節用集」など)や、「センダツ」とあるもの(「明応本節用集」「天正本節用集」「黒本本節用集」「易林本節用集」など)、両者を挙げるもの(「日葡辞書」)など様々である。しかし江戸時代以後は、次第に「センダツ」に統一されるようになった。
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学問や技芸で先に達した人をいうが、とくに修験道で用いられた。修験者(山伏)のなかで峰中(ぶちゅう)の行路や秘所に精通し、儀礼の指導者となれる人を峰先達(みねせんだつ)といったが、そうした修験者はまた霊験所(れいげんしょ)へ参る道にも明るかったので、人々を引導する道先達(みちせんだつ)という職掌が生れた。
平安末期から皇室、貴族が盛んに熊野詣した背景には道先達の活動があった。熊野詣は中世に庶民化するが、諸国在住の修験者が参詣道者(どうじゃ)の先達を務め、熊野御師(おし)に引き渡す団参制度が確立した。熊野三山検校(けんぎょう)になった京都の聖護院(しょうごいん)門跡(もんぜき)は、南北朝頃より諸国修験に対して先達職(せんだつしき)を認可し、本山方(ほんざんがた)修験教団(本山派)を形成する。当山方(とうざんがた)(当山派)は、近畿地方の山岳寺院の修験僧が大峯正(おおみねしょう)大先達仲間を組織し、それぞれ諸国の袈裟下(けさした)修験を支配した。羽黒山(はぐろさん)、英彦山(ひこさん)その他の修験教団でも独自の先達制度をもった。それぞれの組織内で峰先達に対し峰中修行の度数に応じて幾多の位階を設けていた。
[鈴木昭英]
『新城常三著『新稿社寺参詣の社会経済史的研究』(1982・塙書房)』▽『宮家準著『山伏―その行動と組織』(1973・評論社)』▽『鈴木昭英著「熊野御師と熊野先達と熊野三山検校―修験道本山派の形成に関連して」(『山岳修験 6』・日本山岳修験学会)』
本来は,学問・技芸・修行などの先輩をさし,また諸山参詣者の宗教的指導者すなわち道案内者の意味である。平安末期以来盛んになった熊野参詣者の安全を確保し,導く際の儀式を行う熊野先達には,熊野で修行を積んだ修験者(山伏)があたった。先達をすることで参詣者すなわち檀那から礼銭が与えられたことから,やがて修験者は先達をする檀那を収入源とみなし,先達をする権利が一種の株となっていった。やがて先達の権利を集中した修験者は,支配下に多くの修験者をかかえる本寺の性格をもって,江戸時代には修験道組織(本山派,当山派など)のリーダーとして存在した。このような性格のおもだった修験者を先達と呼ぶ。また,本来の宗教的道案内の意味から,数多くの入峰(にゆうぶ)修行を積んだ修験者を尊重して大先達と呼んだ。
→山伏
執筆者:高埜 利彦
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「せんだち」とも。学問や技芸などに通達して他者を導く先輩。案内者や指導者の意もあるが,とくに峰入りなどの勤行(ごんぎょう)を重ねて同行者や信者を霊山や寺社に導く修験者をさすことが多い。これには初穂料や案内料を受納する権限(職)をともなう。本山派修験道で峰入り5度以上を先達,9度以上を大先達と称するように,峰入りの回数や役割を意味する場合もある。
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…道者は,三山のいずれかの坊を守る験者に願文を捧げて師匠・檀那の契約を結ぶ。のちには,道者群を同族単位または地域単位に組織して,参詣,祈禱の斡旋をする仲介者としての先達(せんだつ)が発生した。こんにち広く全国の山岳宗教にみられる〈御師・先達〉の制度は,実に熊野三山が先鞭をつけたものであり,こうした風が,全国的な熊野権現社の各地への勧請(かんじよう)の盛行とともに,全国に熊野信仰を鼓吹することとなったのである。…
…旅行者と旅館・ホテルなどの宿泊施設,鉄道・航空会社などの運輸機関との間にあって,旅行者に対し予約,手配,斡旋などのサービスを提供し,その報酬を得る事業。 日本における旅行業の先駆者は平安末期ころから活躍したという熊野(和歌山県)の先達(せんだつ)である。彼らは熊野で修行を重ねた山伏で,里へ戻って加持祈禱を行いながら,熊野参詣の道案内を務めた。…
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