免疫系疾患

内科学 第10版 「免疫系疾患」の解説

免疫系疾患(全身疾患と消化管)

 消化管は種々の外来抗原や病原体に直接暴露されており,免疫異常の状態では消化管病変が好発する.消化管粘膜ではB細胞,T細胞,NK(natural killer)細胞,マクロファージなどの免疫担当細胞がGALT(gut-associated lymphoid tissue)を構築し,粘膜から侵入しようとするさまざまな外来抗原を排除することで生体を防御し,内部環境を維持する粘膜防御機構が存在する.これは粘膜免疫とよばれ,全身系免疫とは異なる独特な免疫システムである.免疫異常においてこの粘膜免疫が破綻し,さまざまな消化管病変が出現する.原発性免疫不全症にみられる消化管病変としては,消化管感染症,スプルー様病変,潰瘍を伴う多彩な炎症性変化,自己免疫病変,消化管の悪性腫瘍などがあげられる.これらには反復・遷延する重篤な感染や遺伝子欠損,変異などによる上皮再生障害などが,病変成立機序において重要な役割を果たしていると考えられている.一方,続発性免疫不全症(acquired immunodeficiency syndrome:AIDS,adult T-cell leukemia/lymphoma:ATL/L,graft-versus-host disease:GVHDなど)ではさまざまな寄生虫ウイルスなどの日和見感染,Kaposi肉腫,原発腫瘍の腫瘍細胞自体の浸潤による消化管病変,組織アポトーシスなどが生じる.[安藤貴文・後藤秀実]

出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報

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