精選版 日本国語大辞典 「入・這入」の意味・読み・例文・類語
はい・る はひる【入・這入】
〘自ラ五(四)〙 (「はひいる(這入)」の変化した語)
① 外部から、ある場所や環境などに移る。
(イ) 外から、ある物の中やある場所の内へ移動する。また、移動して、その中にいる。
(ロ) 見える所から物かげに移動する。奥へひっこむ。日、月が沈むのにもいう。「日が西の山にはいる」
(ハ) 学校、会社など、特定の環境の中の一員になる。
② ある限られた範囲内に取り込まれる。
(イ) ある物の中に収まる。含まれる。また、つめこんだり、収容したりすることができる。「庶民の口にはいる」
※洒落本・世説新語茶(1776‐77か)粋事「『ありゃあおめへ四合へへりやすぜへ』『そふはへへるめへ』」
(ロ) 新たにつけ加わる。割って入りこむ。また、仲間になる。
(ハ) 金品や知らせなどが、手元に届けられる。「他社の情報が手にはいる」
(ニ) 心、目、耳などの知覚に取り入れられる。「頭にはいる」「目にはいる」
③ 次第にある状態、時期などに達する。「夜にはいる」「明治時代にはいる」
※蟹(1959)〈庄野潤三〉「電気を消して寝る体勢に入ったが、なかなか眠れないでいる」
④ 気持や力などがこもる。「力がはいる」「勉強に身がはいる」
※苦の世界(1918‐21)〈宇野浩二〉四「ヒビのはひった赤銅縁の眼鏡」
⑥ 付けられる。施される。「罫のはいったノート」「模様のはいった封筒」
※はやり唄(1902)〈小杉天外〉一二「洋燈には、今しも火が点(ハヒ)った処である」
⑦ 湯を加えたりして飲物ができる。
※人情本・春色辰巳園(1833‐35)後「サア茶がはいったヨ」
⑧ 剣道などで、技が決まる。
※天覧試合陪観記(1934)〈菊池寛〉「素人の自分には、剣道の試合などは分るものでない。どちらの面がは入ったのか、どちらの小手がは入ったのか」
[語誌](1)名詞形「はひいり」「はいり」は中古から例があり、動詞「はひいる」から生じたと考えられる。
(2)動詞「はいる」の初期の例は「這う」の意が強く、①の挙例「平家」も、覚一本では「はいり」であるが、百二十句本では「這(ハイ)入て」とあり、「這う」の意が薄れた後でも①(ロ)の「幼稚子敵討」にも「這入る」の表記が用いられている。
(3)自動詞「はいる」に対する他動詞形は下二段動詞「いる(いれる)」である。
(2)動詞「はいる」の初期の例は「這う」の意が強く、①の挙例「平家」も、覚一本では「はいり」であるが、百二十句本では「這(ハイ)入て」とあり、「這う」の意が薄れた後でも①(ロ)の「幼稚子敵討」にも「這入る」の表記が用いられている。
(3)自動詞「はいる」に対する他動詞形は下二段動詞「いる(いれる)」である。
はいり はひり【入・這入】
〘名〙 (動詞「はいる(入)」の連用形の名詞化)
① はいること。はいいり。
② 邸宅の入口。また、門から家までのところ。はいりぐち。はいいり。
※和泉式部集(11C中)上「見にとくる人だにもなし我宿のはひりの柳下はらへども」
③ やっとはいるぐらいであること。きわめて狭いこと。また、そのところ。
※日葡辞書(1603‐04)「Fairino(ハイリノ) コヤ」
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報