八郎太郎(読み)はちろうたろう

朝日日本歴史人物事典 「八郎太郎」の解説

八郎太郎

秋田県男鹿半島の八郎潟の主とされる伝説の人物。八郎太郎は,幼少のころより強力の持ち主で,山中で水を汲んでいるとき,3尾の岩魚を食べたが,のどがしきりに渇くので谷川の水をせきとめて7日7夜,水を飲みつづけているうちに,気がつくと大きな湖ができ,自分は大蛇になっていた。これが十和田湖で,八郎太郎ははじめその主であった。ところが訪れた熊野の僧南祖坊が,八郎太郎に術を仕かけ,争った結果,八郎太郎は敗れて八郎潟に逃げこの湖の主になる。のちにかつての恋人であった辰子が田沢湖の主になっていることを知り,田沢湖へ通う。今でも,秋の彼岸から翌春の彼岸まで,八郎太郎は田沢湖に行って冬籠りをしていると伝えている。

(宮田登)

出典 朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版朝日日本歴史人物事典について 情報

デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「八郎太郎」の解説

八郎太郎 はちろうたろう

秋田県の湖沼伝説の登場人物。
鹿角(かづの)の若者。仲間の掟(おきて)をやぶって3尾のイワナをひとりでたべたためのどがかわき,川の水をのみつづけているうちに大蛇となり,十和田湖をつくって主(ぬし)となる。のち紀伊(きい)熊野の僧南祖坊に追われ,八郎潟をつくってすみかとした。田沢湖の辰子(たつこ)姫のもとにかよい,冬はいっしょにすんだという。

出典 講談社デジタル版 日本人名大辞典+Plusについて 情報 | 凡例

世界大百科事典(旧版)内の八郎太郎の言及

【巨人】より

…それが信仰の衰微とともに,さまざまな伝説となって各地に伝えられている。奥羽の八郎太郎は大蛇に化したという話以外に,巨人として山を削ったり,川をせき止めたりしたという話もある。栃木県のデイデンギメという巨人は,羽黒山に腰掛けて鬼怒川で足を洗ったという。…

※「八郎太郎」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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