公民権停止(読み)こうみんけんていし

改訂新版 世界大百科事典 「公民権停止」の意味・わかりやすい解説

公民権停止 (こうみんけんていし)

公民権とは,国または地方公共団体の公務に参与する権利義務を有する公民としての資格をいう。日本国憲法の下では公民という考え方は廃止され,したがって,公民権の停止は,一般に選挙権,被選挙権の停止と解されているので,以下これについて説明する。選挙権,被選挙権の停止については,公職選挙法(以下公選法という)11条および252条にみられる。まず,公選法11条では,(1)禁治産者,(2)禁錮以上の刑に処せられ,その執行を終わるまでの者,(3)禁錮以上の刑に処せられ,その執行を受けることがなくなるまでの者(刑の執行猶予中の者を除く),(4)選挙に関する犯罪により禁錮以上の刑に処せられ,その刑の執行猶予中の者は,選挙権,被選挙権を有しないとしている。そして252条では選挙犯罪受刑者に,一般犯罪による受刑者よりも厳しい処分を科している。すなわち,(1)罰金刑に処せられた者は,裁判確定のときから5年間(刑の執行猶予の言渡しを受けた者については,その裁判が確定した日から刑の執行がなくなるまでの間。252条1項),(2)禁錮以上の刑に処せられた者は,その裁判が確定した日から刑の執行を終わるまでの間または刑の執行の免除を受けるまでの間(刑の時効による場合を除く)およびその後の5年間,選挙権,被選挙権が停止される。裁判が確定した日から刑の執行を受けることがなくなるまでの間もまた同じである(252条2項)。なお,買収犯については5年が10年に加重される(252条3項)。

 このように選挙犯罪の受刑者は一般受刑者より厳しく扱われるのが原則であるが,裁判所は情状によって欠格を免除し,欠格期間を短縮することができることになっている(252条4項)。したがって,このような選挙犯罪者の厳しい扱いに対して,公選法252条は憲法14条(法の下の平等),44条(議員および選挙人の資格),15条1,3項(公務員の選定罷免の権,普通選挙の保障)に違反するのではないかとする争いがある。最高裁は選挙の公明化の見地から合憲としている(1961年の判決)。
選挙犯罪
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百科事典マイペディア 「公民権停止」の意味・わかりやすい解説

公民権停止【こうみんけんていし】

公民権とは一般的に選挙権被選挙権の停止とされ,公職選挙法(1950年)で規定される。選挙権・被選挙権を有しない者とは,(1)禁治産者,(2)禁錮以上の刑を終わるまでの者,(3)禁錮以上の刑の執行を受けることがなくなるまでの者(執行猶予者を除く),(4)選挙違反により禁錮以上の刑を受けて執行猶予中の者(以上,11条)。選挙違反には厳しい処分があり,罰金刑の場合は判決確定から5年間(執行猶予者は猶予期間中),禁錮以上の場合は判決確定から執行終了までとその後の5年間(買収の場合は10年。以上252条)。1994年の公職選挙法改正により,公職にある者が,その間に収賄罪を犯した場合も刑の執行期間とその後の5年間(執行猶予の場合は猶予期間中)公民権の停止とされた。また,連座制の強化により,候補者本人の当選が無効となった場合は,同一選挙区内での5年間の立候補禁止が盛り込まれた。
→関連項目公民権

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