六尺(読み)ロクシャク

デジタル大辞泉 「六尺」の意味・読み・例文・類語

ろく‐しゃく【六尺/陸尺】

輿こし駕籠かごを担ぐ人足。駕籠舁かごかき
「―十二人すぐりて、小さき家のありくがごとし」〈浮・一代男・五〉
下僕。下男。
「あとなる―目に角を立てて」〈浮・永代蔵・一〉
(「漉酌」とも書く)造り酒屋の下男。
池田伊丹の―たちは、昼は縄おび縄だすき」〈松の葉・三〉
まかない・掃除などをする雑役人の総称
「御近習の人の召しつかふ坊主、―などいふものの」〈折たく柴の記・中〉

ろく‐しゃく【六尺】

1尺の6倍。一間いっけん曲尺かねじゃくで約1.8メートル。
六尺褌ろくしゃくふんどし」の略。
六尺棒」の略。

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精選版 日本国語大辞典 「六尺」の意味・読み・例文・類語

ろく‐しゃく【六尺・陸尺・漉酌】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 貴人の駕籠を担ぐ人足。また、雑役夫、下僕の称。〔日葡辞書(1603‐04)〕
    1. [初出の実例]「婦人歩行のしりへに、六尺(ろくシャク)・小者などに物もたせてつれゆく事」(出典:評判記・色道大鏡(1678)一四)
  3. 雑貨品を売り歩く行商人。〔日葡辞書(1603‐04)〕
  4. ( 「漉酌」とも書く ) 造り酒屋の下男。〔文明本節用集(室町中)〕
    1. [初出の実例]「池田伊丹の六しゃく達は、昼は縄おび縄だすき、夜は綸子の八重まはり」(出典:歌謡・松の葉(1703)三・いけだ)
  5. 棺担ぎ棒。また、棺を担ぐ役目をいう。
  6. 江戸時代駕籠舁(かごかき)をはじめ、賄方(まかないかた)掃除夫など雑役人の総称。江戸幕府では紅葉山御高盛六尺二〇人・御賄六尺三八八人・御風呂屋六尺一二人など頭とも数百人の六尺を抱え、それぞれに役米・金、役扶持を給した。
    1. [初出の実例]「享保年中六尺の人数を凡に積り、扶持を御料だかにつもり合せ」(出典:地方凡例録(1794)五)

ろく‐しゃく【六尺】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 一尺の六倍。曲尺で約一・八メートル、鯨尺で約二・三メートル。一間。→
    1. [初出の実例]「寸虫猶覚全生義、六尺長身莫自由」(出典:田氏家集(892頃)下・見叩頭虫自述寄宗先生)
  3. ろくしゃくふんどし(六尺褌)」の略。
    1. [初出の実例]「六尺の切れは穢き緋ちりめん」(出典:雑俳・折句式大成(1753))

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「六尺」の意味・わかりやすい解説

六尺
ろくしゃく

六尺褌(ふんどし)の略。丈が六尺(曲尺(かねじゃく)または呉服尺、180または220センチメートル)の1本の布で巻き締める褌のこと。慶長(けいちょう)(1596~1615)以来、貴人、武士庶民を通じ広く使用された。羽二重(はぶたえ)、縮緬(ちりめん)、繻子(しゅす)、緞子(どんす)などいろいろで、色も白に限らず、赤や紺などもあったが、一般には晒木綿(さらしもめん)が用いられた。母方の実家から8、9歳になる男児に褌を贈り、「へこ祝い」(成年式)をする風習もあった。大正の終わりごろまで用いられたが、しだいに廃れた。

 また、陸尺とも書いて、一般には駕籠(かご)かきをいうが、そのほか賄方(まかないかた)、掃除夫など雑役(ざつえき)人をも総称する。江戸幕府では、紅葉山御高盛六尺20人、御賄六尺388人、御風呂屋六尺12人など数百人の六尺を抱え、それぞれに役米、役扶持を支給していた。

[片岸博子]

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改訂新版 世界大百科事典 「六尺」の意味・わかりやすい解説

六尺 (ろくしゃく)

陸尺とも書く。駕籠舁(かごかき)をはじめ掃除夫,下男などの雑役人をいう。江戸幕府には奥六尺,表六尺,紅葉山御高盛六尺,御賄六尺,御用部屋六尺,奥御膳所六尺,御膳所六尺,御風呂屋六尺,椀方六尺などがあった。いずれも御目見(おめみえ)以下,二半場,白衣勤,15俵一人半扶持高であり,人数はそれぞれ10人前後から400人近くまでさまざまであった。役向きによっては分掌も多くあり,また頭(御目見以下,二半場,役上下)のおかれたものもあった。
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百科事典マイペディア 「六尺」の意味・わかりやすい解説

六尺【ろくしゃく】

陸尺とも記。江戸時代,武家における駕籠(かご)かき,掃除夫,賄(まかない)方などの雑用に従う人夫をいった。江戸城における六尺は奥六尺・表六尺・御膳所六尺・御風呂屋六尺など数百人に及び,彼らに支給するため天領から徴集した米を六尺給米といった。頭を除いてはいずれも御目見以下,二半場(にはんば),白衣勤,15俵1人扶持高であった。

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普及版 字通 「六尺」の読み・字形・画数・意味

【六尺】りくせき

若者。〔論語、泰伯〕曾子曰く、以て六尺のを託すべし、以て百里の命を寄すべし。大に臨んで奪ふべからず。君子人か、君子人なり。

字通「六」の項目を見る

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世界大百科事典(旧版)内の六尺の言及

【駕籠】より

…江戸幕府の職制には3名の駕籠頭(かごがしら)があり,各数十名の駕籠者(かごのもの)を支配して,将軍家乗物のことをつかさどったが,また乗物制度による国持大名以下の乗物乗用者も,その身分,格式に準じた人数・服装の駕籠者をおいて,これをかつがせていた。この乗物をかつぐ駕籠者のことを,また陸尺(ろくしやく),六尺とも呼んでいるが,これを〈ろくしゃく〉というのは,古く乗輿をかつぐのに力のある者を用いたところから,輿丁・舁夫を力者(りきしや)と呼んだのがなまったのだという。また駕籠舁というのは,これらの乗物をかつぐ駕籠者・陸尺以外の,市中や道中などで庶民の乗用する駕籠をかついだ,いわゆる駕籠舁渡世の者のことである。…

【奉公人】より

…奉公人という称呼は,中世では上位の従者,家臣をさすものとして用いられるのが一般的であった。御恩・奉公【佐藤 堅一】
【武家奉公人】
 近世初頭までは侍身分の者をも奉公人のうちに加えていたが,江戸時代では将軍や大名,旗本・御家人や大名の家中に雇用された若党(わかとう),足軽中間(ちゆうげん),小者(こもの),六尺,草履取(ぞうりとり),ときに徒士(かち)などの軽輩をさし,軽き武家奉公人ともいう。その平生の身分は百姓,町人であり,武家奉公中のみ家業として帯刀が許され,奉公さきの家来の取扱いをうけた。…

【六尺給米】より

…江戸時代,幕府直轄領(天領)農村に課せられた高掛物と呼ばれる付加税の一種。江戸城台所の六尺と呼ばれる人夫の給米として,村高100石につき米2斗の割合で徴収した。毎年,年貢割付状によって賦課し,本年貢といっしょに米または代金で納めさせた。…

※「六尺」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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