日本大百科全書(ニッポニカ) 「六次産業化」の意味・わかりやすい解説
六次産業化
ろくじさんぎょうか
農林水産物を収穫・漁獲(第一次産業)するだけでなく、加工(第二次産業)し、流通・販売(第三次産業)まで手がけることで、農林水産業の経営体質強化を目ざす経営手法。農業経済学者で東京大学名誉教授の今村奈良臣(ならおみ)(1934―2020)が1990年代なかばに提唱した概念で、第一次産業の「1」に第二次産業の「2」と第三次産業の「3」を足して「6」になることから名づけた造語である。農林水産業者の六次産業化で、従来、第二次・三次産業事業者に回っていた加工賃や流通マージンなどを農林水産業者自身が獲得し、付加価値を向上させるねらいがある。農林水産物のブランド化、地域特産品の開発、消費者への直販などの手法がとられることが多く、販路拡大や農山漁村活性化と関連づけて論じられることが多い。
政府は日本再生戦略の一環として六次産業化を推進するため2010年(平成22)12月、六次産業化法(地域資源を活用した農林漁業者等による新事業の創出等及び地域の農林水産物の利用促進に関する法律。平成22年法律第67号)を公布した。農林水産省が六次産業化する事業を認定し、補助金や情報提供などで支援している。2012年8月には、加工分野や販売分野への進出を金融面で支援する六次化ファンド法(株式会社農林漁業成長産業化支援機構法。平成24年法律第83号)が成立。国と民間企業が共同出資でファンドをつくり、農林漁業者と食品会社などが共同でつくる企業に出融資する制度が創設された。2019年2月末までの累計認定件数(総合化事業計画)は2535件。「大根ドレッシングの製造と高品質な大根つまの通年安定供給」(2011年)「しいたけを世界に通用する食材へ」(2013年)「自社栽培の大葉を使用した新商品の開発と販売」(2016年)などがある。
[編集部]