〈ろっぱらみつ〉ともいう。波羅蜜はサンスクリットのpāramitāを音写した語で,波羅蜜多ともされる。〈完成した,到達した〉を意味し,仏教経典では古くは〈度(ど)〉,またのちには〈到彼岸(とうひがん)〉などとも訳されている。この度や到は〈渡る,到る〉の意味で,迷いのこちら側から,悟りのむこう側へ渡った,到着したことを表している。大乗仏教の最も重要な修行方法を六種とし,それらの完成した,完全なあり方を波羅蜜と名づけたのである。その六種とは,布施(ふせ)(与えること),持戒(じかい)(戒律を守ること),忍辱(にんにく)(耐え忍ぶこと),精進(しようじん)(ひたすら努力すること),禅定(ぜんじよう)(心を集中・安定させること),智慧(ちえ)(とらわれなく判断すること)である。これらが単にみずからのための修行であるだけではなく,他のすべての人々のためのものとなってはじめて波羅蜜といいうるのである。また,智慧は前の五つの根本となるもので,六波羅蜜は智慧波羅蜜を中心としている。智慧をさらに方便(ほうべん)(手段),願(がん)(自発的),力(りき)(能力),智の四つに分かち,合計して十波羅蜜とすることもある。
→般若(はんにゃ)
執筆者:井ノ口 泰淳
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…ただし単一の経典ではなく,諸種の般若経典を総称したもの。何ものにもとらわれない〈空観(くうがん)〉の立場に立ち,またその境地に至るための菩薩の〈六波羅蜜(ろくはらみつ)〉の実践,とくに〈般若波羅蜜〉の体得が強調される。そこから従来の部派仏教に対しては厳しい批判的な態度をとる。…
…同書には,太陽が真東から出て真西に没する春分・秋分にこそ日想観を行い,極楽往生を願うべきであることがのべられている。彼岸会は盂蘭盆(うらぼん)会とともにはやくより仏教行事となっており,その典拠なり意味づけについて今日ひろくなされている説明は,六波羅蜜の徳目(布施・持戒・忍辱(にんにく)・禅定・精進(しようじん)・智慧)を前後3日のそれぞれにあて,中日は先祖に感謝する日とし,宗教的理想に向かっての実践週間が〈お彼岸〉だとするものである。巧みな解釈ではあるが,これでは彼岸が日本独自の国民的行事になったことの説明にはならない。…
…定と慧を合わせて止観(しかん)ということもある。大乗では実践を六波羅蜜(ろくはらみつ)にまとめる。波羅蜜とは完成されたあり方,もしくは理想世界(彼岸)にわたることと解釈される。…
※「六波羅蜜」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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