1854年結党。キリスト教、家族の価値、自助精神を重んじる。キリスト教福音派などの宗教保守、銃規制や人工妊娠中絶、同性婚に反対する社会保守、減税や財政規律を重視する経済保守が支持基盤。地盤は南部や中西部。白人高齢層の支持が増えている。伝統的に同盟国を重視し、自由貿易を党是としてきたが、トランプ大統領の下で変質が進む。
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民主党と並ぶアメリカ合衆国の二大政党の一つ。ホイッグ党Whig Partyなどの流れをくみ、1854年に結党された。共和党結党当時から現在まで150年以上にわたり、アメリカ大統領はかならず共和、民主、どちらかの政党に所属している。
[前嶋和弘 2021年9月17日]
共和党は結党当時、北部を基盤とする奴隷制反対を訴えた政党である。南北戦争直前の1860年の大統領選挙でリンカーンが共和党としては初めての大統領に選ばれた。南北戦争の勝利以降、20世紀初めまで共和党優位の時代が続く。とくに、南北戦争以後、1932年の大統領選挙まで、G・クリーブランドとW・ウィルソンの2人の民主党大統領を除いて共和党が大統領職を独占していた。南北戦争以降、共和党は奴隷制反対の政党から、保護関税と金本位制度を政策の中心とする、資本家の利益を推進する「親ビジネス」の政党に変貌(へんぼう)していった。第30代大統領J・C・クーリッジの「アメリカの国民のビジネス(本分)はビジネスを行うことだThe chief business of the American people is business.」という演説がその象徴だろう。
しかし、クーリッジに続いて大統領となったH・フーバーの在任時に起こった1929年の大恐慌から共和党の命運が変わる。大量の失業者を前にフーバーは政府による経済の介入を控える政策を堅持し、失業者の増加を許すなか、議会主導で決まった保護貿易政策の徹底でさらに墓穴を掘った。
1932年の大統領選挙では、政府の強いリーダーシップで民間経済を支えていくニューディール政策を打ち出した民主党のフランクリン・ルーズベルトが圧倒的な得票で勝利した。この選挙をきっかけに共和党はその後長きにわたり、劣勢となっていく。1933年3月から1995年1月の62年の間で共和党が議会で多数派となったのは、下院では4年、上院では10年でしかなかった。大統領職についても2期を務めたアイゼンハワーやレーガンもいたが、この期間で共和党が大統領職を担ったのは24年間にとどまっていた。
ただ、アメリカ南部の保守化に伴い、1970年代ごろから共和党勢力の伸長が目だっていく。とくに伝統的な価値体系を重視する南部のキリスト教福音派の影響が大きかった。もともと南部では長年民主党支持が強かったが、公民権運動や女性解放運動をアメリカ東部の民主党が主導したこともあり、南部における民主党からの離脱が目だっていった。それとともに南部の保守的な民主党議員「サザン・デモクラットSouthern Democrats」にかわる形で、共和党議員が福音派からの支持を集めていった。さらに北東部を中心に1980年代までは存在した「ロックフェラー・リパブリカンRockefeller Republicans」とよばれる共和党内の穏健派が、引退するか、民主党に議席を奪われるかしていった。このように共和党に対してしだいに保守派からの支持が純化していった。一方でリベラル派からの支持は、民主党に集まる形で現在の政治的分極化につながっている。
[前嶋和弘 2021年9月17日]
現在、保守派の多くは、「政府の経済活動や私生活への干渉をできるだけ少なくすべきである」という「小さな政府」を基本的な政治的信条としている。民主党支持者が訴える政府の積極的なリーダーシップによる政策は、保守派にとっては税金をむだ遣いする「大きな政府」志向にすぎない。また、公民権運動や所得再分配を政府の過度な介入とみることから、保守派に人種マイノリティではなく、白人が多いのも特徴である。減税や規制緩和を期待する富裕層の共和党支持が厚いのはいうまでもない。
自由貿易を重視する共和党支持者がかつては多かったが、トランプ政権に象徴されるようにTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)に強く反発し、特定の国家からの輸入品については高い関税をかける保護主義的な貿易を志向するように大きく変貌している。これには支持層の変化も大きい。グローバル化で雇用が海外に流出しているのに加え、増え続ける移民に雇用を奪われたと感じる白人ブルーカラー層を取り込むことで共和党の支持層の裾野(すその)を広げており、トランプ政権はこの層に配慮した政策を行ったといえる。白人ブルーカラー層は、2009年から始まったティーパーティ運動に加わっており、2016年大統領選挙でのトランプ現象を生んだ一因となった。アメリカの人口動態の急激な変化に対する反作用の象徴がトランプという存在であるといっても過言ではないだろう。
また、キリスト教的な伝統生活を志向するキリスト教福音派は現在、共和党のもっとも強固な支持層として一枚岩になっている。福音派キリスト教的な倫理感を重視するために、彼らは同性婚反対、妊娠中絶反対を強く訴えており、共和党の政治家もこれに呼応している。
福音派の分布と重なるように、地理的に共和党支持が多いのは南部、中西部諸州である。共和党候補への投票が過半数を上回る州(赤い州red states)の代表が、テキサス州、アラバマ州、ルイジアナ州、ユタ州、アラスカ州などである。ただ、多くの州ではたとえ南部でも都市部は移民の流入などで民主党支持が増える傾向にある。たとえばジョージア州のように、州全体では共和党、都市部では民主党と政党支持が異なるケースも生まれている。
[前嶋和弘 2021年9月17日]
テキサス州では移民の増加などもあり、都市部では共和党の支持が強固とはいえないようになりつつある。共和党のなかにはより移民に寛容な政策を打ち出していかなければ時代に追いつけなくなってしまうという声があるなか、人種マイノリティのうち、反共産主義という信条からキューバ本国から移ってきたか、その子孫であるキューバ系の人々からは共和党への支持が厚い。現在の政治的分極化は拮抗(きっこう)状況にあり、政党支持の態度も移民の世代によって異なることも想定されるため、今後の長期的な政党支持の動向はまだ予断を許さない。
[前嶋和弘 2021年9月17日]
フランスの保守中道政党。略称はLR。結党されたのは2015年であるが、その歴史は古く、起源は1958年に当時の大統領ドゴールが結成したUNR(Union pour la Nouvelle République、新共和国連合)にまでさかのぼることができる。その後、UNRはゴーリスト左派のUDT(Union Démocratique du Travail、民主労働同盟)と合同、1967年にUD-Ve(Union des démocrates pour la Ⅴe République、第五共和政のために民主連合)、さらに1968年にUDR(Union pour la défence de la République、共和国防衛連合)へと党名を変えてきた。
このように、共和党の源流はアルジェリア戦争によるクーデター事件を収束させるために全権委任されたドゴールが進めたゴーリズム(ドゴール主義)にある。ゴーリズムにはさまざまな側面があるが、フランスの国益と主権を守ることを原則に、強い指導者と国民の結びつきによって、資本主義と社会主義の負の側面を克服していくものと定義できよう。ここから対米自立外交路線や計画経済といったUDRの政策が結実していくことになった。このように、ゴーリズムは当初から特定の指導者と結びつき、政党組織というよりも、政治家個人による党派的運動の側面が強い。そのため正式名称に「党Parti」とついたことは一度もなく、またリーダーの方針に応じて名称も変更されていくことになる。実際には「共和党」よりも「共和派」という訳語のほうが正確といえるだろう。
圧倒的支持を誇ったドゴールと、冷戦構造と高度成長のもと、このゴーリズム路線は支持され、UDRやその流れをくむ政党を中心とした保守支配は、1958年から1981年まで約四半世紀にも及ぶことになった。
[吉田 徹 2018年7月20日]
共和党の直接の前身は、2002年に結党されたUMP(Union pour un Mouvement Populaire、国民運動連合)にある。同党は同年の大統領選挙に際して現職大統領のジャック・シラクが、決選投票で極右政治家ジャン・マリ・ルペンJean-Marie Le Pen(1928― )と争うという異例の事態を迎えて、急遽(きゅうきょ)結党された。ゴーリスト政治家として1960年代にキャリアをスタートさせたシラクは、1976年に対立していた中道の大統領バレリー・ジスカール・デスタンのもと首相職を辞任、UDRを改組してRPR(Rassemblement Pour la République、共和国連合)を立ち上げ、その後1986年に首相として、また1995年には大統領として同党を率いる。もっとも、RPRは1988年や1995年の大統領選での敗北に伴うEU(ヨーロッパ連合)懐疑派の離党など、相次ぐ内部分裂に悩まされていた。そのため、中道諸派を含む形で大同団結を実現させることは、同党の長年の課題であり、そのなかで画策されたのがUMPの結成であった。
RPR総裁の経験をもち、シラクのもとでの閣僚を務めつつ、UMP総裁を足がかりに2007年に大統領となったのがサルコジであった。
[吉田 徹 2018年7月20日]
共和党への改称は2012年にサルコジが社会党のオランド候補に破れ、野党としてのイメージ改革の一環として打ち出されたものであった。2017年の大統領選を視野に、社会党と同じように一般有権者を含む形で公開予備選を導入することが決定され、2016年11月には約400万人の有権者が予備選に参加した。かつて指導者のもとに結集させられるのがゴーリズムの伝統であったのが、候補者を指名するためへの組織へと変容したことは大きな変化であったといえる。
2016年の公開予備選では下馬評を覆してサルコジや元首相ジュペAlain Juppé(1945― )を降(くだ)して、前首相フィヨンFrançois Fillon(1954― )が共和党の指名候補者となった。しかし、同候補は架空雇用や違法献金疑惑などスキャンダルにみまわれ、2017年の大統領選ではマクロンと、ジャン・マリ・ルペンの娘であるマリーヌ・ルペン両候補を前に、決選投票に進出できずに終わった。
大統領に選出されたマクロンは、社会党やゴーリストを含む超党派の内閣を発足させ、共和党出身のフィリップÉdouard Philippe(1970― )を首相に任命した。下院選でも議席が伸び悩んだこともあり、共和党からは中道派と合従連衡(がっしょうれんこう)してフィリップ内閣を支える議員団も誕生し、同党は再び内部分裂にみまわれている。
[吉田 徹 2018年7月20日]
『渡邊啓貴著『フランス現代史』(中公新書)』
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アメリカの二大政党の一つ。南北戦争を前に奴隷制拡大反対の諸勢力を結集して,1854年に形成され,56年の選挙に大統領候補を立て全国政党として登場し,60年の選挙にはその候補リンカンを当選させて,二大政党の一つとしての地位を確立した。シンボルマークはゾウ。
歴史的には,建国期のフェデラリスツ,1830年代以降のホイッグ党の流れをくむ。19世紀中葉に民主党が南部プランター勢力の政党と化するに及び,それに対抗して東北部の新興産業資本勢力と中西部の自営農民層との連合体として組織された。西部出身でありかつホイッグ党出身のリンカンは,この連合の組織者であるとともに象徴でもあった。60年の政綱では奴隷制拡大反対を最大公約数とし,産業資本には保護関税政策を,農民層にはホームステッド(自営農地)法制定を,両者を結ぶものとして大陸横断鉄道の実現を約束し,広く東部の都市住民,西部の農民に訴えている。南北戦争後,共和党は急激に発展する東部の工業,ますます拡大する西部の農業を背景に,アメリカ資本主義の興隆を担う政党として,1929年よりの大恐慌にいたるまで,2名の民主党大統領の任期(S.G. クリーブランド,T.W. ウィルソン)を除き,政権を続けて掌握していた。その政策も,保護関税政策,鉄道などの企業への援助策,金本位政策などいわゆる大実業の利益を促進するものが多かった。外交面においても,米西戦争,門戸開放政策,ドル外交など世界強国としてのアメリカの利益を促進する積極政策を展開した。しかし,共和党自体の中にも,ウィスコンシン州のラ・フォレットに代表されるような農民層を地盤とする革新勢力が存在していたことも留意されなければならない。
1932年の選挙以降,共和党は半ば万年少数党化し,大統領選挙ではアイゼンハワー,ニクソン,レーガンなどを当選させたが,下院の議席では2期4年を除きつねに少数党であった。40年以降は,民主党のニューディール政策を基本的には認め,穏健な中道政策を表明してきたが,民主党政権の下で,一方で社会福祉政策の費用が膨大化し,連邦政府の機構が巨大化し,他方ベトナム戦争以降アメリカの対外威信が弱まるにつれ,国内的には小さな政府を,対外的には強いアメリカを標榜し,アメリカ社会の右傾化に乗じて,しだいに勢力を拡大してきた。ことに,人口の比重が東北部の大都市地帯(スノー・ベルト)から西部,南部のいわゆるサン・ベルトへと移行するに伴い,そうしたサン・ベルトを背景に,共和党の支持層が増大しつつあることは注目してよい。
→民主党
執筆者:斎藤 真
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①ジェファソンを指導者として1794年頃形成されたアメリカの政党。1801年に政権を得た後しだいに連邦党を圧倒し,16年以後対立政党を持たなかったが,24年までに党の統一は失われ,やがて民主党とホイッグ党とに分かれた。
②アメリカの二大政党の一つ。奴隷制の拡大に反対する人々が1854年に組織したのが始まりで,北部諸州で急速に勢力を伸ばし,60年にはリンカンを大統領に当選させた。南北戦争中から戦後にかけて,共和党は奴隷を解放し黒人に市民権を与える政策を推進したが,南部では勢力を築くことができず,76年以後,南部の人種問題の処理を南部白人に任せた。また南北戦争中から保護関税,鉄道建設助成など産業資本家の要望に沿う政策を推進した。共和党は南北戦争後1932年まで,4度の例外を除き大統領選挙に勝ってきたが,32年の選挙に敗北した後は保守政党として敬遠され,50年代に8年間政権を保持しただけだった。しかし60年代末からは,保守主義への再帰傾向とソリッド・サウスの崩壊とに助けられて,共和党の大統領が多くなっている。
出典 山川出版社「山川 世界史小辞典 改訂新版」山川 世界史小辞典 改訂新版について 情報
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[アメリカ]
アメリカの政党は,皮肉なことに反政党主義的立場に立っていたワシントンの下での主要閣僚であったハミルトンとジェファソンによって,18世紀末に創設された。すなわち連邦党と民主共和党である。当初優位に立っていた連邦党は19世紀に入ると民主共和党に連敗して消滅し,民主共和党体制が続く中で〈ジャクソニアン・デモクラシー〉時代が到来したが,この間に民主党と呼ばれるようになった民主共和党では,党内のジャクソン派と反ジャクソン派の対立が激化し,反ジャクソン派は1828年に国民共和党(1834年にホイッグ党と改称)を結成し,40年にハリソン,48年にタイラーを大統領に当選させた。…
※「共和党」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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