内在(読み)ナイザイ(英語表記)immanence 英語

デジタル大辞泉 「内在」の意味・読み・例文・類語

ない‐ざい【内在】

[名](スル)
あるものが、そのものの中におのずから存在すること。「人の心に内在する道徳律」⇔外在
哲学で、超越に対し、現象がみずからの内にその根拠・原因をもっていること。神が世界の内において働く原因である(スピノザ)、経験可能の範囲にある(カント)、事物意識自我の内にある(主観的観念論)などのさまざまな意味に用いられる。

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精選版 日本国語大辞典 「内在」の意味・読み・例文・類語

ない‐ざい【内在】

  1. 〘 名詞 〙
  2. ある事物または性質が、異なる他のものの内に含まれて存在すること。
    1. [初出の実例]「第一の場合に於いて内在の一物が、明白なる感想なるに反し」(出典:囚はれたる文芸(1906)〈島村抱月〉一〇)
  3. 精神作用において、原因・結果がともにその作用のうちにあることをいうスコラ哲学用語。⇔超越
  4. 神が世界のうちにその本質としてあらわれていることをいう形而上学・宗教哲学の語。〔普通術語辞彙(1905)〕
  5. 経験の限界内にあること、意識の内容としてあることをいう認識論の語。カントの用語。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「内在」の意味・わかりやすい解説

内在
ないざい
immanence 英語
immanence フランス語
Immanenz ドイツ語

広義では、ある存在者の本性に含まれ、またとどまっていること。超越に対する概念。たとえば良心の内在によって、人は外的権威や偶然的要素の介入なしにおのずと罪を悔い改める。汎神(はんしん)論では神の働きは自然に内在していて、神は世界から超越せる外的存在者ではない。人の内在的活動としての「思う」ことは、精神内の概念形成に行き着くだけであり、また「見る」ことは、見る側の変容ではあっても、見られる物を変化させることはない。これらは、物の加熱変形、分割などの他動的・推移的活動とは異なる。近・現代の意識の哲学と現代存在論においては、事象の意識への内在と意識からの超越とがとくに問題になる。いっさいの現れは私にとっての現れであるとするなら、私の意識から独立した自存的存在へ観念を通じて間接的に到達することが課題となる。現代存在論は、意識の志向性理論によって、意識から超越した存在の直接的認識を主張するが、かわりに意識は実体性を失い、絶えざる自己超越・外化のなかで己の内面を失い、内在概念を不明瞭(めいりょう)にし、蒸発させた。

[松永澄夫]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「内在」の意味・わかりやすい解説

内在
ないざい
Immanenz; immanence

一般的には,ある現象がその根拠,原因を自己自身のうちにもっている事態をいう哲学,神学用語。超越に対する。存在をどのように考えるかによって定義はさまざまに異なるが,大きくは次の2つに分けられる。 (1) 形而上学的,神学的意味 すべての運動の根拠を神あるいは一者に求め,このような神が世界,自然のうちに含まれて働くとする場合 (アリストテレスの内在因,そのキリスト教的発展としての汎神論など) 。またアリストテレスのイデア論のように実体とその属性の関係において,後者が前者のうちに含まれているとする場合。 (2) 認識論的意味 カントの認識論において可能的経験の限界においてのみ成立する対象の実在性をいう。この場合,内在は超越のみならず,先験的にも対立する。ここから 19世紀末の内在哲学 (W.シュッペ,レームケなどがその代表) が出てきた。フッサールの現象学では対象や意味がすでに意識のなかに志向的に存在するといい,これを内在と呼んだ。

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