内外価格差(読み)ないがいかかくさ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「内外価格差」の意味・わかりやすい解説

内外価格差
ないがいかかくさ

国内と海外の価格の格差を表した指標のこと。一物一価の法則が成立するならば、国内でも海外でも同じ商品は同じ水準の価格で取引され、また為替(かわせ)相場は同じ商品を同じ水準の価格にするような相場に均衡することになる。この相場を購買力平価という。内外価格差の計算方法は、購買力平価÷為替相場である。たとえば、日本で1個200円で売られている商品がアメリカで1個1ドルで売られていた場合、購買力平価は1ドル=200円ということになる。実際の為替相場が1ドル=100円だとすると、この商品は日本で200円なのにアメリカでは100円(1ドル)で買えることになり、内外価格差が2倍程度あるということになる。購買力平価が高くなるか、実際の為替相場が安くなれば内外価格差は縮小することになる。近年、規制緩和技術革新によって、生産性が向上し非効率な産業の効率化が図られたことで日本の物価が下落して、日本の内外価格差は縮小してきている。一方で、日本では工業製品に比べて、サービス価格の内外価格差が大きい傾向がある。なお、2009年度(平成21)の調査によると、日本の内外価格差はアメリカが1.61倍、対ドイツが1.40倍、対韓国が2.43倍、対台湾が2.44倍、対香港(ホンコン)が2.05倍、対中国が3.68倍で、すべての国・地域の平均は2.27倍であった(経済産業省「2009年度産業の中間投入に係る内外価格調査」による)。

[吉川哲生]

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知恵蔵 「内外価格差」の解説

内外価格差

同一の財・サービスにおける国内価格と円換算した海外価格との格差。海外価格は、為替市場で決定された通貨の交換レートで換算される。従って、円高が進むと円建ての海外価格は下落し、内外価格差は拡大する。1985年のプラザ合意後の急速な円高以降注目されるようになった。経済企画庁(現・内閣府)では88年から生計費の内外価格差調査を実施。同調査によると、88〜98年までの調査期間で、東京とニューヨークとの価格差が最大となったのは、年平均の為替レートが最も円高(1ドル=94円)となった95年で、東京の生計費はニューヨークの1.52倍。その後、円安を反映して、98年には1.08倍まで格差は縮小した。経済企画庁の「物価レポート'99」では、「内外価格差の是正には、規制緩和により、国内の競争を促進することで、国内価格を引き下げ、購買力平価を改善していくことが重要である」としている。

(本庄真 大和総研監査役 / 2007年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「内外価格差」の意味・わかりやすい解説

内外価格差
ないがいかかくさ

さまざまな種類の内外価格差がある。第1は,輸入可能な特定の商品 (牛肉,ウイスキー,ガソリンなど) が日本では高い。第2は,日本から輸出している特定の商品 (カメラ,テレビ,フィルムなど) は日本のほうが輸出先国より高い。第3は,特定の国際間サービス (国際航空運賃,国際電話など) は日本発のほうが高い。第4は,輸入不可能な特定のサービス (電気・ガス・水道の公共料金,家賃など) は国内価格のほうが高い。これらの内外価格差が発生する原因もさまざまで,(1) 何らかの政策目的による規制や税制などによるもの,(2) 急速な円高の進行によるもの,(3) 輸出企業の価格戦略・ダンピングによるもの,(4) 海外や国内においても競争にさらされていないものなどがある。

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百科事典マイペディア 「内外価格差」の意味・わかりやすい解説

内外価格差【ないがいかかくさ】

同一あるいは同種の商品・サービスの価格に,国内と国外で格差があること。円高の進行で,日本の物価はドル・ベースでは欧米に比べて高いものが多く,日米構造協議でも問題とされた。輸入の拡大や流通の改善などで縮小傾向にあるが,内外価格差の存在は〈ドルでみた所得は高いが,国民生活の水準は低い〉という現象の一因である。
→関連項目石油業法

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