制酸薬(読み)セイサンヤク(その他表記)antacid

翻訳|antacid

デジタル大辞泉 「制酸薬」の意味・読み・例文・類語

せいさん‐やく【制酸薬】

制酸剤」に同じ。

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改訂新版 世界大百科事典 「制酸薬」の意味・わかりやすい解説

制酸薬 (せいさんやく)
antacid

制酸剤ともいう。胃液中の塩酸を化学的に中和する薬物で,過酸症や消化性潰瘍の治療に用いられる内服アルカリ剤。制酸薬は,その中和作用緩衝作用胃酸による胃粘膜への侵襲を防止するほか,吸着,被覆などの作用もあり,消化管の潰瘍面,炎症面を保護する。さらに胃内の酸性度の低下によりペプシンの不活性化も同時に起こり,胃液による消化管粘膜への侵襲の防止がいっそう効果的となる。制酸薬の中和は必ずしもpH7以上にする必要はなく,pH3.5以上で十分に胃液の消化作用は抑制される。

 また,一般に制酸薬は持続作用を有することが望ましいが,胃内容がアルカリ性になると二次的に胃液の分泌が増大するとともに胃内容の排出が速やかとなり,制酸薬の服用間隔を短くする必要があるので,多少酸性側に保持することが望ましいといわれる。制酸薬はその作用機序から吸収性制酸薬と局所性制酸薬に分類される。

炭酸水素ナトリウムクエン酸ナトリウム酢酸ナトリウムなどがこれに属する。これらのアルカリ剤は,速効性であるが,胃酸を中和後に吸収されて血液のアルカリ予備を増大し,過量ではアルカロージスを起こす。このグループの薬剤として代表的な炭酸水素ナトリウムの1.0gは,1/10規定の塩酸120mlを中和する能力がある。胃内のアルカリ性が強まるため,胃幽門部からの胃酸分泌刺激ホルモンのガストリンの分泌を促し,また中和に際して発生する二酸化炭素の作用も加わって二次的に胃酸分泌の亢進を起こす欠点がある。

塩酸中和後も消化管から吸収されにくい化合物で,粘膜の被覆作用もある。酸化マグネシウム炭酸カルシウム水酸化アルミニウムゲル胃粘膜ムチンイオン交換樹脂など。二次性酸分泌亢進は起こしにくく,制酸薬として好ましい条件を備えたものが多い。炭酸カルシウムの1.0gは1/10規定の塩酸200mlを中和する。炭酸カルシウムと水酸化アルミニウムは便秘を起こす傾向があり,炭酸マグネシウムは下剤作用を有する。実際には,各種制酸薬の利点と欠点を配合のくふうにより相補うような製剤が用いられている。
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百科事典マイペディア 「制酸薬」の意味・わかりやすい解説

制酸薬【せいさんやく】

内服して過剰の胃酸を中和あるいは吸着する薬剤。胃粘膜を被覆して潰瘍(かいよう)面や炎症面を保護する作用を合わせもつものもある。吸収性制酸薬(炭酸水素ナトリウムなどで,胃液を中和後,腸から吸収されて血中予備アルカリを増加させる)と,局所性制酸薬(ケイ酸アルミニウム陰イオン交換樹脂などで,消化管からは吸収され難い)に大別される。そのほかロートエキスなどの副交感神経麻痺(まひ)薬は胃酸の分泌を抑制する。
→関連項目ケイ(珪)酸アルミニウム

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世界大百科事典(旧版)内の制酸薬の言及

【胃腸薬】より

…これに対しては次のような薬物がある。制酸薬(炭酸水素ナトリウム,水酸化アルミニウム,ケイ酸マグネシウム),ヒスタミンH2‐受容体拮抗薬(シメチジン,ラニチジン),プロトンポンプ阻害薬(オメプラゾール,ランソプラゾール),副交感神経遮断薬(ピレンゼピン,アトロピン,ロートエキス)。(6)整腸薬 腸内の異常発酵や便秘,下痢などに対する薬物である。…

※「制酸薬」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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