普及版 字通 「前」の読み・字形・画数・意味
前
常用漢字 9画
(旧字)
9画
(異体字)
10画
[字訓] つめきる・すすむ・まえ・さき
[説文解字]
[甲骨文]
[金文]
[字形] 会意
正字は、あるいはに刀を加えた形。止+舟+刀。止は趾(あし)ゆび。舟は盤。盤中の水で止(あし)を洗って、刀で爪を剪りえるのである。前は趾指の爪を切る意の字であるが、前後の意から前進、また往昔などの意となる。〔説文〕二上に「行かずしてむ。之れをと曰ふ。止の舟上に在るに從ふ」とを舟行の意とするのは、盤形の舟を舟船、また趾の形を行止の止と誤り解したもので、系列の字の形義が理解されていない。〔史記、恬伝〕に「旦(周公)自ら其の爪を(き)り、以て河に沈む」とあって、爪切ることは修祓の儀礼。その爪を河に投ずるのは、自己犠牲としての意味をもつことであった。喪礼のときにも、蚤(そう)(爪切り)・(せん)(髪切り)をする俗があった。
[訓義]
1. つめきる、爪をきりそろえる、旅立ちの前や帰還のとき行う。
2. すすむ、まえ、さきだつ。
3. あらかじめ、みちびく。
4. さき、以前、むかし、もと。
5. 剪・と通じ、きる、そろう。
[古辞書の訓]
〔名義抄〕 マヘ・サキ・ススム・トシ・ノボル・ハジメ・スナハチ・カナフ・マヅ
[声系]
〔説文〕に()声として翦・剪・・・・・など十字を収める。おおむねの声義を承ける字である。
[語系]
・剪・翦tzianは同声。tshean、dzuanも声義近く、は草などを除する、(さん)は髪のように用いる字である。
[熟語]
前悪▶・前引▶・前因▶・前陰▶・前楹▶・前鋭▶・前衛▶・前縁▶・前恩▶・前呵▶・前科▶・前過▶・前覚▶・前岸▶・前銜▶・前規▶・前軌▶・前騎▶・前戯▶・前却▶・前駆▶・前訓▶・前勲▶・前軍▶・前渓▶・前月▶・前賢▶・前愆▶・前験▶・前言▶・前彦▶・前古▶・前功▶・前好▶・前構▶・前行▶・前恨▶・前歳▶・前山▶・前史▶・前此▶・前志▶・前事▶・前時▶・前式▶・前識▶・前失▶・前室▶・前日▶・前車▶・前儒▶・前秀▶・前秋▶・前修▶・前溲▶・前鞦▶・前春▶・前緒▶・前宵▶・前蹤▶・前上▶・前身▶・前進▶・前人▶・前綏▶・前▶・前聖▶・前世▶・前夕▶・前迹▶・前跡▶・前川▶・前占▶・前走▶・前代▶・前第▶・前達▶・前談▶・前知▶・前逐▶・前秩▶・前儔▶・前兆▶・前程▶・前庭▶・前提▶・前哲▶・前轍▶・前途▶・前頭▶・前登▶・前闘▶・前任▶・前年▶・前輩▶・前非▶・前蹕▶・前婦▶・前忿▶・前鋒▶・前盟▶・前面▶・前尤▶・前遊▶・前▶・前慮▶・前良▶・前例▶・前烈▶・前列▶・前聯▶・前路▶・前輅▶・前労▶
[下接語]
以前・雨前・前・花前・階前・眼前・巌前・空前・軒前・見前・現前・午前・最前・在前・参前・事前・膝前・従前・承前・牀前・食前・燭前・神前・酔前・生前・簷前・尊前・直前・庭前・馬前・風前・仏前・前・墓前・没前・面前・目前・門前・夜前・林前・霊前・楼前
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報