劇症肝炎の治療法の新しい展開

六訂版 家庭医学大全科 の解説

劇症肝炎の治療法の新しい展開
(肝臓・胆嚢・膵臓の病気)

 欧米では肝移植主体ですが、日本では第一に人工肝補助をはじめとした内科的治療により救命する試みが行われます。2010年の臓器移植法改正以来、脳死ドナーが増加し、劇症肝炎では現在、約25%の方が肝移植により救命されています。しかし、ドナー不足や医療費の問題を含めてまだまだ多くの課題があります。

 人工肝補助療法では、血漿交換と血液透析濾過(ろか)という方法を組み合わせた血液浄化療法が行われます。近年全国調査で、大量の浄化を行うオンライン血液透析濾過あるいは高流量持続血液透析濾過療法を行っている施設での昏睡覚醒率が高いことが明らかとなり、この2つの方法が標準治療として推奨されることになりました。

 しかし、これらの治療法は限られた施設でしか行えないこともあり、充分普及しているとはいえないのが現状です。現在、持続的に大量の血液浄化を行うことができるオンライン血液持続透析濾過の機器が開発されつつあり、普及が期待されます。

 劇症肝炎にまで進行すると、救命は困難になりますので、昏睡が発現する前に専門施設に搬送して、昏睡発現予防治療をすることで、劇症肝炎そのものを予防しようとする試みが行われています。全国のいくつかの専門施設が、広域の診療ネットワークを構築して、早期劇症化予知、搬送システムを稼働させて成果をあげています。

出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

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