功徳(読み)クドク

デジタル大辞泉 「功徳」の意味・読み・例文・類語

く‐どく【功徳】

仏語
現世来世に幸福をもたらすもとになる善行善根。「功徳を施す」
神仏の恵み。御利益ごりやく
[補説]「こうとく」と読めば別語
[類語]善行篤行陰徳善根

こう‐とく【功徳】

功績徳行
[補説]「くどく」と読めば別語。

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精選版 日本国語大辞典 「功徳」の意味・読み・例文・類語

く‐どく【功徳】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「く」は「功」の呉音 ) 仏語。
  2. 現在、また未来に幸福をもたらすよい行ない。神仏の果報をうけられるような善行。すぐれた果を招く力を徳としてもっている善の行為。断食、祈祷喜捨造仏写経の類。
    1. [初出の実例]「功徳。〈謂。修善也〉」(出典:令義解(718)僧尼)
    2. 「読経にまさる功徳(クドク)なれ」(出典:読本・昔話稲妻表紙(1806)四)
    3. [その他の文献]〔大乗義章‐九〕
  3. 神仏のめぐみ、ごりやく。善行をつんだ報い。
    1. [初出の実例]「業障重 功徳軽」(出典:性霊集‐一(835頃)喜雨歌)
    2. 「この御経のくどくあまねく人の知るところ也」(出典:黄表紙・高漫斉行脚日記(1776)上)

こう‐とく【功徳】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 功績と徳行。事功と恩徳。
    1. [初出の実例]「頌とは、宗廟に奏するの楽、先祖の功徳を頌美して祭にすすむる故なり」(出典:読詩要領(1802))
    2. [その他の文献]〔史記‐秦始皇紀〕
  3. 人や世の中のためになる善行。恩恵。くどく。
    1. [初出の実例]「民に功徳なき者、何を用て奉祀せん」(出典:江戸繁昌記(1832‐36)二)
    2. [その他の文献]〔礼記‐王制〕

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改訂新版 世界大百科事典 「功徳」の意味・わかりやすい解説

功徳 (くどく)

仏教用語。サンスクリットのグナguṇaの訳。善い行為には,すぐれた結果を招く力が徳としてそなわっていることをいう。善を積み,あるいは修行の結果,むくいとして得られる果報,恵みという意味で福徳,利徳,利益,神仏の恵みを指し,またすぐれた結果をもたらす能力をもいう。造寺,造仏,写経,祈禱などの善行為には,現在または未来において幸福,利益をもたらす能力があるとみる。そして造寺造仏などの,よいむくいを受けるべき因としての善行を指して,善根(ぜんごん)功徳または功徳善根などという。功徳善根とは福祉のもとたる善根との意味である。善い行為には福徳,利益をもたらす価値ある特質,すぐれた徳性があるとみるのである。因としての善行為と果としての利益には,宗教的に純粋なものと世俗的なものとがあるが,中国の浄土教家曇鸞(どんらん)は,前者を真実功徳と賞し,後者を不実功徳とけなしている。新宗教のなかには,世俗的な功徳を民衆に説くものが多い。
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普及版 字通 「功徳」の読み・字形・画数・意味

【功徳】こうとく

功業仁徳。〔礼記、王制〕天子五年に一たび守す。~民に功には、地を加へ、律(爵)をむ。

字通「功」の項目を見る

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「功徳」の意味・わかりやすい解説

功徳
くどく

善行や福徳における優れた性質、また善や福を積んで得られたもの。功徳と訳されるサンスクリット語グナguaは、優れた性質、価値ある特質を意味する。そのほか功徳と訳される語には、プニヤpuya(福、善、福徳)やアヌシャンサanuśasa(利点、利益)などがある。また善の行為には、宗教的なものと世俗的なものがあり、中国の曇鸞(どんらん)は前者を真実功徳、後者を不実功徳とする。なぜなら一方は悟りの果をもたらすが、他方はもたらさないからである。

[瓜生津隆真]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「功徳」の意味・わかりやすい解説

功徳
くどく

仏教用語。善根を積むことによって報いられる功能福徳の意。属性,性質を意味するサンスクリット語グナ guṇaの訳語。それが「良い性質」「善いこと」の意に用いられ,さらに「利益」「すぐれた点」の意に転じて用いられた。

功徳
くどく
meritum; merit

キリスト教神学用語。ある善業を行うことによって得られる報償を受ける「権利」,またその報償,あるいはそれを得る道徳的善業のこと。改革派は善業の功徳性を認めない。

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