勅勒の歌(読み)ちょくろくのうた

改訂新版 世界大百科事典 「勅勒の歌」の意味・わかりやすい解説

勅勒の歌 (ちょくろくのうた)

中国,南北朝時代における北方の代表的民歌の一つで,北方の草原地帯の雄大な風物を飾りなくうたった作品。北斉斛律金(こくりつきん)(488-567)が高歓の命でこの歌をうたい士気を鼓舞したとされる。民歌が軍歌に取り入れられていたのであろう。もと鮮卑語であった作品を漢訳したものが《楽府(がふ)詩集》巻八十六に収められている。〈勅勒の川 陰山の下(ふもと) 天は穹廬きゆうろ)に似て 四野を籠蓋(ろうがい)す 天は蒼蒼たり 野は茫茫たり 風吹き草低(た)れて牛羊を見る〉。原作がトルコ語系統の言葉であり,漢訳されたあとにもトルコ民歌の様式のなごりがとどめられている。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の勅勒の歌の言及

【中国文学】より

…北朝の歌謡には北西の異民族から取り入れられたものがあった。6世紀に北斉の軍中でうたわれたという《勅勒(ちよくろく)の歌》の原文はたぶんトルコ語で,今は漢訳だけが伝わるのだが,北方の草原の風景をうたった古今の絶唱である。これら歌謡は文人の詩歌の源泉ともなって,彼らの情操を養った。…

※「勅勒の歌」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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