勅旨省(読み)ちょくししょう

改訂新版 世界大百科事典 「勅旨省」の意味・わかりやすい解説

勅旨省 (ちょくししょう)

奈良時代に置かれた令外の官制。具体的内容は未詳。《続日本紀》の天平宝字8年(764)10月の記事に勅旨員外大輔任命がみえるから淳仁天皇の時代に藤原仲麻呂の政策によって新しく設置された省と思われ,782年(延暦1)4月,桓武天皇の行政簡素化の方針によって廃止された。《続日本紀》等にみえる官人任命の記事によって,卿,大輔,少輔,大丞等四等官制で構成された省で,雑色匠手など服翫の諸用具を製作した技術者がいたことが判明するが,その具体的組織,活動は史料がなく未詳である。勅旨の語は勅旨田勅旨牧という類似用法からみると,律令国家の枠外で皇室の需要をみたす場合に使われているから,おそらく孝謙上皇(称徳天皇)の供御の諸用具を調進する臨時の省であったと思われる。その後身は勅旨所としてしばらく存続したことが789年の勅旨所牒によって判明する。
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