勾当内侍(読み)コウトウノナイシ

デジタル大辞泉 「勾当内侍」の意味・読み・例文・類語

こうとう‐の‐ないし〔コウタウ‐〕【勾当内侍】

掌侍ないしのじょう四人のうちの第一位の者。天皇への奏請の取り次ぎ、勅旨伝達をつかさどる。長橋ながはしつぼね長橋殿
太平記」に登場する美女後醍醐天皇に仕えて勾当内侍となり、のち、新田義貞の妻となった。義貞の戦死後、琵琶湖に投身したとも、出家したとも伝えられる。

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朝日日本歴史人物事典 「勾当内侍」の解説

勾当内侍

生年生没年不詳
南北朝時代,新田義貞の妻のひとり。世尊寺経尹の娘,一条行房の妹。一説に行房の娘とも。匂当内侍は職名。『太平記』は「天下第一の美人」とする。内侍の弾く琴の音を聞いて義貞が恋慕し,歌を遣わしたのが出会いである。建武3/延元1(1336)年,足利尊氏が九州に没落していたとき,直ちに下向して討ち滅ぼすべき好機を失したのは,義貞が内侍との別れを惜しんで下向を延期したためと『太平記』は記す。また後醍醐天皇比叡山に逃れたとき,勝に乗って追撃すべきところをしなかったのも内侍に迷ったせいだとする。節目節目で義貞の進退を誤らせた女性,つまり傾国の美女として描かれているわけであるが,これは軍記文学のパターンを踏んだものと考えられ,どこまでが事実か定かではない。義貞の討死後は,出家して嵯峨の往生院辺りに住んだといわれる。なお義貞の正室は,安藤左衛門五郎重保の娘で義顕の生母。義貞が北条高時を攻め滅ぼしたとき,高時方の叔父安東聖秀の命乞いをほのめかした彼女は,聖秀から逆にたしなめられたという。義貞の妻としてはほかに天野民部橘時宣の娘も知られている。

(田端泰子)

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改訂新版 世界大百科事典 「勾当内侍」の意味・わかりやすい解説

勾当内侍 (こうとうのないし)

南北朝時代の女性。生没年不詳。後醍醐天皇に仕え,勾当内侍の職にあったので,その名をもって呼ばれる。一条経尹の三女,行房の妹。新田義貞に見そめられ,天皇の許しを得て義貞の妻となった。1338年(延元3・暦応1)義貞が越前で戦死すると,尼になって洛西嵯峨に住み,夫の菩提をとむらった。これは《太平記》の伝えるところで,一説には琵琶湖に身を投げて義貞のあとを追ったともいう。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「勾当内侍」の意味・わかりやすい解説

勾当内侍
こうとうのないし

新田義貞の妻。藤原経伊 (つねただ) の娘で,後醍醐天皇に仕え,勾当内侍 (天皇に仕える女官掌侍〈ないしのじょう〉4人中首席の者。長橋の局ともいい,奏請,伝宣を司る) となる。建武中興ののち,義貞に見そめられ,勅許あって,その妻となった。足利尊氏が挙兵して兵乱が起ったとき,義貞は内侍への愛にひかれ,たびたび戦機を逸したという。『太平記』によれば,延元3=暦応1 (1338) 年義貞が越前で敗死したのち,洛北嵯峨に出家遁世した。

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「勾当内侍」の解説

勾当内侍(2) こうとうのないし

?-? 南北朝時代の女官。
藤原行房の妹,または娘。後醍醐(ごだいご)天皇につかえる。「太平記」によれば,新田義貞にみそめられ,天皇の許しをえて義貞とむすばれたという。内侍をおもうあまり合戦に専念できなかったという義貞の逸話がある。

勾当内侍(1) こうとうのないし

?-? 鎌倉時代の女官。
父は平棟俊。後二条天皇の掌侍となる。その寵愛(ちょうあい)をうけ,乾元(けんげん)元年(1302)寿成(じゅせい)門院を生んだ。

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世界大百科事典(旧版)内の勾当内侍の言及

【局】より

…位階を冠して一位局,二位局などと称し,あるいは官職を冠して大納言局,中納言局などというのは上﨟の女房で,按察使局(あぜちのつぼね),小督局(こごうのつぼね)などはこれに次ぐ。また中世以降宮中の重要な地位となった勾当内侍(こうとうのないし)は,その候所が紫宸殿から清涼殿に通ずる長橋の傍にあったので,長橋局とよばれた。近くは明治天皇の生母中山慶子,大正天皇の生母柳原愛子が二位局とか一位局と称され,武家でも将軍の居所に仕えた女房は局を称し,将軍徳川家光の乳母斎藤氏が朝廷から春日局の称をたまわったのは有名である。…

【長橋局】より

…宮中に仕えた女官で,勾当内侍(こうとうのないし)の別称。清涼殿の東南隅から紫宸殿の御後(ごご)に通ずる細長い板の橋を長橋といい,そのそばに勾当内侍の局(つぼね)があったことからこの称が生まれた。…

【女房奉書】より

…室町・戦国時代に盛んに使用された,天皇・上皇の仰せを側近の女房が奉じた仮名奉書。とくに天皇の女房奉書は勾当内侍(こうとうのないし)が奉ずる。鎌倉中期以降の公家政治は,院政にあっては伝奏(てんそう)が,親政にあっても鎌倉末までには伝奏が置かれ,政務を執る院や天皇の奏聞・伝宣の役を担っていた。…

※「勾当内侍」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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