略して当量とも呼ばれ,元素の当量,酸および塩基の当量,酸化剤および還元剤の当量などがある。
水の分子は原子価1の水素原子H2個と,原子価2の酸素原子O1個からできていて,成分元素の質量比は2×(Hの原子量):1×(Oの原子量)=(Hの原子量):1/2×(Oの原子量)であり,水素1.008に対し酸素1/2×16.00=8.00が過不足なく化合している。この水素1.008と酸素8.00はたがいに当量であるという。酸素の1/2原子量が酸素の当量で,これと化合する各元素の量をその元素の当量という。当量の値にグラムをつけた量をその元素の1グラム当量という。水素や酸素と直接には化合しない元素の当量は,当量が既知である適当な元素を仲介にして決めることができるが,一般にいって,元素は原子量/原子価の割合で過不足なく化合するものであるから,この値が元素の当量になる。
酸として作用する水素1当量を含む酸の量を酸の当量とし,これと中和する塩基の量を塩基の当量という。たとえば,硫酸H2SO4(式量98.08)には酸として働く水素が2個あるから,硫酸の当量は98.08÷2=49.04である。
水素1当量を奪いうる酸化剤の量,および水素1当量を与えうる還元剤の量をそれぞれ酸化剤,および還元剤の当量という。たとえば,過酸化水素H2O2は酸化剤としては,H2O2+2(H)─→2H2Oと反応し,還元剤としては,H2O2─→O2+2(H)と反応するので,酸化,還元いずれの場合も1molが2当量であり,H2O2の当量は17.01である。酸化還元反応では物質間の電子の授受を伴うから,1グラム電子(e⁻で表し,アボガドロ数だけの電子)の授受に相応する酸化剤あるいは還元剤の量を当量と定義しておけば明確になる。たとえば,過マンガン酸カリウムKMnO4(式量158.04)の硫酸酸性溶液では,
MnO4⁻+8H⁺+5e⁻─→Mn2⁺+4H2O
のように反応するから,このKMnO4の当量は31.61である。なおKMnO4の中性あるいはアルカリ性溶液では,
MnO4⁻+4H⁺+3e⁻─→MnO2+2H2O
と反応するから,当量は52.68となる。このように反応の条件により当量の異なることがわかる。
執筆者:佐野 瑞香
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
単に当量と略することがある。歴史的には原子量を決定するための基準として導入された概念。次の3種がある。
(1)元素の当量 酸素の2分の1グラム原子(8.000グラム)と化合する他の元素の量をxグラムとするときのxをいう。歴史的には、水素(原子価1)を基準として他の元素の原子量を決めようと考えたので、その元素の原子量を原子価で割って当量としていた。
原子量=原子価×当量
当量分のグラム数の元素の量を1グラム当量という。
(2)酸・塩基の当量 1当量の水素を含む酸の量をその酸の当量という。また、それを中和する塩基の量を塩基の当量という。たとえば、硫酸H2SO4では、酸として働く水素が二つあるので、式量98を2で割った49が酸の当量、水酸化ナトリウムNaOH(式量40)では40が塩基の当量である。
(3)酸化・還元の当量 酸化還元反応において、酸化剤または還元剤の式量を、反応で移動する電子の数で割った値である。この当量は反応の種類により、化合物によって一定値をもたない。
しかし、「学習指導要領」では「化学当量」は使用しないようになっている。
[下沢 隆]
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