日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
北海(North Sea)
ほっかい
North Sea
イギリスと、ヨーロッパ大陸のベルギー、オランダ、ドイツ、デンマーク、ノルウェーなどに囲まれた大西洋の縁海。北はオークニー諸島、シェトランド諸島を北限とし、大西洋、ノルウェー海に向かって開け、南はドーバー海峡、イギリス海峡を経て大西洋に通じている。東はスカゲラク海峡、カテガット海峡を経てバルト海に通じている。南北約850キロメートル、東西約550キロメートル、面積約57万平方キロメートル。海底は南から北へ徐々に深度を増すが、南部は非常に浅く、大陸棚が広がっている。中南部のドッガー・バンクDogger Bank(浅堆(せんたい))より南方は20メートル前後の深さで、バンクより北では急に深くなり100メートルに達する。最深部はノルウェー海岸スカラゲ付近で700メートルを超している。
浅海で多くの河川が流入するため塩分濃度はやや低い。大西洋水35以上、沿岸水32~34、バルト海からの流入水32以下などが混合し、34~35の塩分濃度を有している。外洋からの潮流の流れも複雑で、スコットランドから北を回ってイギリス東岸を南下する潮流は、イギリス海峡から流入する流れに遮られ、イギリス東海岸の潮差を大きくする。また、北からの風と大潮時が重なると海水が北海南部に滞留し、ときに異常潮位を記録して、イギリス、オランダなどの低地に浸水する。このような潮流と流入河川水、浅海であるなどの条件が重なり、北海は古くから世界三大漁場の一つに数えられてきた。漁場の中心はドッガー・バンクで、ニシン、タラ、カレイなどがおもな漁獲物である。
北海は、地質構造上は古生代末以来絶えず沈降を続けてきた大構造盆地で、中央部に油田・ガス田が存在することが1960年以降明らかとなり、開発が進んでいる。北からマグナス、ブレント、フォーティーズ、ハミルトン、エコフィスク、ダンの各油田、フリッグ、コッド、バイキング、プラシドの各ガス田などが開発され、生産物は海底パイプラインで陸上へ送られている。
[小池一之]