北面(読み)キタオモテ

デジタル大辞泉 「北面」の意味・読み・例文・類語

きた‐おもて【北面】

北に向いている方。北向き。また、その場所。
「宮より―、大きなる山のほとり」〈宇津保・吹上上〉
宮中寝殿造りの家などで、北向きの部屋。また、客間に対して内輪の部屋。
「南の院の―にさしのぞきたれば」〈・二七八〉
院の御所を警固する武士詰め所。また、そこに詰める武士。北面ほくめんの武士。ほくめん。
西面、―の者ども」〈宇治拾遺・一二〉

ほく‐めん【北面】

[名](スル)
北に面すること。北向き。「湖に北面する山」
《昔の中国で、君主は南に、臣下は北に面して座ったところから》臣下または弟子の座。また、臣下として主君につかえること。
北面の武士の詰め所。
北面の武士」の略。

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精選版 日本国語大辞典 「北面」の意味・読み・例文・類語

ほく‐めん【北面】

〘名〙
① 北に面すること。また、北の面。北向き。北側。きたおもて。
※続日本紀‐天平勝宝元年(749)四月甲午「御盧舎那仏像前殿、北面対像」 〔孟子‐万章・上〕
② (中国で、臣下・弟子は北に面して天子・師に対面したところから) 臣下または弟子の着座の作法。また、臣下として服従し、あるいは弟子として師事すること。
※新儀式(963頃)四「太政大臣昇西階。進受醴面柄。進御座前、北面祝曰」 〔史記‐高祖本紀〕
上皇御所北方にある、北面の武士の詰所
※中右記‐元永元年(1118)五月六日「於今者遣武士・検非違使并下人等於河原、可禁歟、別当奉行、只今候北面人々郎等及千余人、皆遣河原了」
今昔(1120頃か)一六「北面の居たる方に和ら行て臨けば」
⑤ 興福寺などの諸院家に警備などのために置かれた下級の僧。
大乗院寺社雑事記‐文明一三年(1481)九月一〇日「諸院家等之北面法師与同篇に被存歟」
遊女の下等なもの。
浮世草子・傾城仕送大臣(1703)二「竹の丞と云し北面の女郎親方茶釜衛士焼火とくゆらせ」

きた‐おもて【北面】

〘名〙
① 北の方角。北に向いていること。または、その場所。きたうけ。きなむき。
※宇津保(970‐999頃)吹上上「宮よりきたおもて、大きなる山のほとり」
※俳諧・続猿蓑(1698)春「くもる日や野中の花の北面〈猿〉」
② 宮中や寝殿造りの家などで、北側のへや。奥の方にあり、女房などのいる内輪のへや。
※落窪(10C後)三「『御前なる人北おもてへ』との給へば、皆往ぬ」
③ 院の御所を警固する武士の詰所。ほくめん。また、そこに詰める武士。北面(ほくめん)の武士。
※今鏡(1170)三「鳥羽の院うせさせ給し時は、きたをもてにさぶらひとさぶらふ下臈どもかきたてて」
※愚管抄(1220)四「さてきたをもてには、武士為義、清盛など」
④ (妻はあまり表に出ないで、多く奥まった北の部屋にいたところから) 他人の妻のこと。奥方(おくがた)。北の方(かた)。〔塵袋(1264‐88頃)〕

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

普及版 字通 「北面」の読み・字形・画数・意味

【北面】ほくめん

北向き。臣下の礼。〔礼記、郊特牲〕君の南するは、陽に答(むか)ふの義なり。臣の北面するは、君に答ふなり。

字通「北」の項目を見る

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世界大百科事典(旧版)内の北面の言及

【北】より

…史実をみても,日光東照宮は江戸から真北に当たる霊廟であり,〈北の政所(まんどころ)〉〈北の方(かた)〉〈北の対(たい)〉〈北の台(だい)〉などの尊称は貴人(大臣,大将,公卿など)の妻室の居所から出た呼び名であった。また,〈北面(きたおもて)〉とは,女性のいる勝手口(奥向き,ないしょの意もある)をさす。たとえば,《枕草子》に,宮仕えしている女房の局(つぼね)に通ってくる恋人の男がそこで食事するのははなはだみっともないと叙した文章の末尾に〈里などにて,北面よりいだしては,いかがはせん。…

【北面の武士】より

…北面とは,院の御所の北面を詰所として上皇の側近に仕え,身辺の警衛あるいは御幸に供奉(ぐぶ)した地下(じげ)の廷臣,衛府の官人らをいう。院司の一つで院の北面とも。…

※「北面」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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