災厄・厄難を払い落とすこと。本来は厄祓(はら)いで、祓(はら)えという呪(じゅ)的行為の一つである。定期的な行事として、あらかじめ厄を払っておくものと、災難や疫病が身に迫ってから、あるいは二度と厄難を受けないために、これを払い落とすものとがある。厄落とし、厄除(よ)け、魔除けなどと似通った点があり、厳密に区別することはむずかしい。その方法としては、まず形代(かたしろ)流しがある。体内の罪、穢(けがれ)、厄を、物に移して流し去るという考え方で、6月と12月の晦日(みそか)に行う大祓(おおはらえ)、三月節供(せっく)の雛(ひな)流し、七夕(たなばた)の眠り流し、厄年の人が身についたものを捨ててくる行為などがある。虫送りなどの鎮送呪術も同類のものである。厄年の行事はほとんどが厄払いで、餅(もち)や豆を投げて災厄を分散し、多人数の力を結集して対抗しようとする。また社寺では厄払いの御札(おふだ)を発行し、職業的な神人(じにん)が年末などにかまどを祓い、また門付(かどづけ)して厄を払って歩く者もある。
[井之口章次]
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