改良品種や栽培種の祖先である在来種や野生種をいう場合と,農業用種子のもとになる種苗をさす場合がある。ここでは後者について述べる。品種改良の結果,育成された作物の新品種は,その遺伝的特性が失われないように育成者の責任で品質管理しながら毎年,種苗増殖を行っている。その畑(水田)を原原種圃(ほ)(原原種農場ともいう)といい,生産された種苗を原原種という。この原原種を,管理の行き届いた畑にまいて,種苗の増殖を図る。この畑を原種圃(原種農場ともいう)といい,採れた種苗を原種という。原種圃は府県や府県農業試験場,採種組合,ときには種苗会社が管理している。原種はさらに採種圃にまかれる。採種圃は普通,農家の採種組合により経営されている。採種圃から採れた種苗が一般農家で栽培に用いるものとなる。作物によって,特別な原種圃をつくることもしばしばある。とくに他殖性作物では,交配のときに不必要な品種の花粉まで混じってしまうおそれがあるので,一般農家の栽培地域から遠くに離れた場所を選んで,原種栽培をすることが多い。またジャガイモのように,病気にかかっていない種いもを手に入れるために,遠隔地に原種圃をつくることもある。日本の農林水産省には,農蚕園芸局種苗課分室(茨城,大阪,福岡の3ヵ所)および馬鈴しょ原原種農場(北海道4,青森,群馬,長野,長崎の8ヵ所),さとうきび原原種農場(鹿児島),茶原種農場(静岡,奈良,鹿児島の3ヵ所)の3組織があったが,1986年,これらを統合して種苗管理センター(2001年より独立行政法人)が設置された。
執筆者:武田 元吉+松崎 昭夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
動物や植物の種類のもとになる種あるいは型をさす用語であるが、使う場合により多少意味が異なっている。一つの種類のなかにいくつかの地方的な型(亜種)あるいは品種がみられるとき、それらの祖先型にあたるものを原種ということがあり、また一群の近縁な種があって類縁関係や系統を考えるとき、それらの共通な祖先型にあたるものを原種ということもある。
動物や植物を分類する面からいえば、一つの種類に地方的な型や品種が含まれている場合に、もっとも時期的に古く命名された型の学名がその種類の種名として採用され、ほかのものはその種内の型名となるが、種名となった型(亜種)が原種・原亜種あるいは原型とよばれることがある。したがってこの場合は、種名に採用された型が、かならずしも系統的にみて、種として基本的ないしは祖先的な形質を備えたものではないことになる。
[中根猛彦]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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