可溶化(読み)カヨウカ(その他表記)solubilization

デジタル大辞泉 「可溶化」の意味・読み・例文・類語

かよう‐か〔‐クワ〕【可溶化】

溶媒に難溶または不溶の物質界面活性剤などを加えて溶解度を増し、均一な溶液にすること。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「可溶化」の意味・わかりやすい解説

可溶化 (かようか)
solubilization

水に難溶または不溶の物質が,その系に界面活性剤共存させることにより溶解して,均一な溶液となること。溶解化ともいう。水中で界面活性剤分子会合してミセルを形成し,ミセルの状態で界面活性剤は親水性基を表面に,また親油性基を内側配向させている。この水溶液中に不溶な物質,たとえば炭化水素等を加えると,それはミセル内部に包まれて見掛け上均一な溶液になる((1)非極性可溶化)。高級アルコール,脂肪酸等の場合はミセルを形成する活性剤分子の間に入りこみ,混合ミセルを形成する形で可溶化する((2)極性-非極性可溶化)。一方,水溶性染料の場合はミセル表面の親水性基部分に吸着されるようにして可溶化される((3)吸着可溶化)。非イオン活性剤の場合はミセル表面にはポリエチレンオキシドが配向しているが,この鎖の中にとりこまれる形((4))もある。このように可溶化は被可溶物や界面活性剤の種類により四つのタイプに分類される。可溶化量は一般に(4)>(2)>(1)>(3)の順である。可溶化の特徴は混合溶媒系の場合と異なり,少量の界面活性剤の共存で可溶化量が急激に増大することである。可溶化には安定なミセル形成能の高い構造をもった活性剤がよい。高分子界面活性剤も可溶化能の高いものが多い。可溶化は乳化とともに,食品医薬農薬をはじめ各種工業材料に至るまで広く利用されている。また生体内で種々の非水溶性の物質が腸膜を通りうるようになるのは胆汁による可溶化の現象である。
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化学辞典 第2版 「可溶化」の解説

可溶化
カヨウカ
solubilization

溶媒に難溶の溶質が,共存溶質(cosolute)の存在によってその溶解度を増す現象をいい,共存溶質を可溶化剤という.溶媒が水で,溶質が有機物(たとえば,油溶性染料)の場合,可溶化剤としては界面活性剤が知られている.水中でほとんど溶解度のない油溶性染料は,界面活性剤がミセル生成濃度以上に存在するとき,かなりの溶解度を示す.この場合,油溶性染料は界面活性剤ミセルの内部または表面の疎水性部分に取り込まれる.水溶性高分子にも可溶化剤としてのはたらきをもつものが多い.ポリ(2-ビニルピリジン)の部分ドデシル化物などのポリソープがその例としてあげられる.高分子電解質であるポリソープは,溶液中で溶媒分子との相互作用や荷電基のイオン化度,分布状態によってその形態が規定されるが,疎水基部分が寄り集まって疎水性のドメインを形成し,そこに疎水性化合物を取り込んで可溶化が行われる.ポリ(ビニルアルコール),ポリメタクリル酸,ポリエチレンイミン,ポリスチレンスルホン酸などの合成高分子,血清アルブミンβ-ラクトグロブリンDNAインスリンなどの生体高分子も可溶化剤として知られている.芳香族スルホン酸,芳香族カルボン酸,フェノール類,アルコール類,ピロリドン類,尿素類を多量に加えると水に難溶性物質の溶解度を増大させる現象は,ヒドロトロピーと称される.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

世界大百科事典(旧版)内の可溶化の言及

【コロイド】より

…ミセルコロイドは水に溶けない物質を溶解することができる。これはミセルの内部に溶けこむためで,これを可溶化solubilizationという。長鎖アルコールなど極性物質を可溶化させると,これらの分子はミセルの中に配向して入り,ミセルは全体として膨潤して大きくなり,非極性物質をさらに可溶化させるようになる。…

【ミセル】より

…ミセルの内部は親油性で,油類を溶かしこむことができる。この現象を可溶化solubilizationといい,界面活性剤水溶液が示す洗浄作用の原因の一つとなる。界面活性剤濃度が高くなると,初め球状ミセルの大きさはそのままで数が多くなっていくが,さらに濃度が高くなると,球状ミセルがさらに会合し,層状ミセルなど種々の会合状態をとるようになる。…

【コロイド】より

…ミセルコロイドは水に溶けない物質を溶解することができる。これはミセルの内部に溶けこむためで,これを可溶化solubilizationという。長鎖アルコールなど極性物質を可溶化させると,これらの分子はミセルの中に配向して入り,ミセルは全体として膨潤して大きくなり,非極性物質をさらに可溶化させるようになる。…

【ミセル】より

…ミセルの内部は親油性で,油類を溶かしこむことができる。この現象を可溶化solubilizationといい,界面活性剤水溶液が示す洗浄作用の原因の一つとなる。界面活性剤濃度が高くなると,初め球状ミセルの大きさはそのままで数が多くなっていくが,さらに濃度が高くなると,球状ミセルがさらに会合し,層状ミセルなど種々の会合状態をとるようになる。…

※「可溶化」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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