向背(読み)キョウハイ

デジタル大辞泉 「向背」の意味・読み・例文・類語

きょう‐はい〔キヤウ‐〕【向背/×嚮背】

《「きょうばい」とも》
従うことと背くこと。こうはい。〈色葉字類抄
背き合うこと。仲たがい。
九郎判官と―し給ふことことわりかな」〈義経記・六〉

こう‐はい〔カウ‐〕【向背】

従うこととそむくこと。「向背常ならず」
物事の成り行き。動静。「事の向背を見守る」

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精選版 日本国語大辞典 「向背」の意味・読み・例文・類語

きょう‐はいキャウ‥【向背・嚮背】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「きょう」は「向」「嚮」の漢音 )
  2. 従うこととそむくこと。こうはい。
    1. [初出の実例]「向背優遊去、形体一世間」(出典:菅家文草(900頃)四・堯譲章)
  3. そむくこと。反抗すること。こうはい。
    1. [初出の実例]「近年在波多野右馬允義常之許、近曾有背主人参上」(出典吾妻鏡‐治承四年(1180)七月二三日)
    2. 「あら無慙(むざん)や、九郎判官ときゃうはいしたまふ事理(ことはり)かな」(出典:義経記(室町中か)六)
    3. [その他の文献]〔李康‐運命論〕
  4. かげひなた。おもてとうら。
    1. [初出の実例]「山は向背(きゃうはい)を成す斜陽の裏(うち) 水は廻流(くゎいりう)に似たり迅瀬(じんらい)の間〈大江朝綱〉」(出典:和漢朗詠集(1018頃)下)
  5. なりゆき。様子。動静。こうはい。

向背の補助注記

「向背」を呉音で「こうはい」と読んでいる例も多い。→こうはい(向背)


こう‐はいカウ‥【向背】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 従うこととそむくこと。従ったりそむいたりすること。きょうはい。
    1. [初出の実例]「以其節凜然而見心之無向背也」(出典:翰林葫蘆集(1518頃)七)
    2. 「何ぞ人情の向背(カウハイ)是の如く速なるや」(出典:報徳記(1856)八)
  3. 互いに背を向けて親しくまじわらないこと。きょうはい。
    1. [初出の実例]「かやうに兄弟の御中向背(カウハイ)におはせしかば」(出典:金刀比羅本保元(1220頃か)上)
  4. 物事の状態や成りゆき。
    1. [初出の実例]「風の向背にて、寒暖遽(にわか)に変すること」(出典:米欧回覧実記(1877)〈久米邦武〉一)

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普及版 字通 「向背」の読み・字形・画数・意味

【向背】こう(かう)はい

賛成と不賛成。順逆動向。〔魏書、楊侃伝〕今且(しばら)く軍を此(ここ)に停めて以て卒を待ち、ねて民の向背をん。然る後行ふべし。

字通「向」の項目を見る

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世界大百科事典(旧版)内の向背の言及

【不孝】より

…すなわち,当時この行為を〈不孝す〉といった。子孫のいかなる行いに対して不孝がなされるかについては,公家法では教令違犯,供養(くよう)の闕(祖父母,父母を養ううえでの手落ち),また武家法では教令違犯,敵対,向背(きようはい)(教訓,指示に背く),不調(ふぢよう)(不行跡)などの抽象的な非行表現で十分であって,非行の内容を具体的に示す必要はなかった。不孝された者は,家から追放され,嫡子に立って家を継ぐ身分も,祖父母,父母の財産の分与にあずかる資格もともに奪われ,すでに与えられた財産も取り上げられた。…

※「向背」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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