呼吸興奮薬(読み)こきゅうこうふんやく(その他表記)respiratory stimulant

改訂新版 世界大百科事典 「呼吸興奮薬」の意味・わかりやすい解説

呼吸興奮薬 (こきゅうこうふんやく)
respiratory stimulant

催眠薬その他の中枢神経抑制薬の過量使用による呼吸抑制や新生児仮死疾病による肺の換気不全状態などの際に,呼吸機能を興奮させる目的で使われる薬物。中枢神経興奮薬のうちでも,延髄呼吸中枢に対して比較的選択性の高い興奮薬として,ジモルホラミン,ジメフリン,ニケタミド,ドキサプラムなどがあり,中枢性呼吸興奮薬として使われる。一方,ロベリアの成分ロベリンは,頸動脈や大動脈にある化学受容器を刺激して反射性に呼吸興奮作用を現す。中枢性呼吸興奮薬は同時に血圧上昇,痙攣けいれん誘発などの作用をもっていて,安全域が広くないため,人工呼吸器(レスピレーター)の普及とともに呼吸興奮薬の使用はしだいに限られるようになった。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「呼吸興奮薬」の意味・わかりやすい解説

呼吸興奮薬
こきゅうこうふんやく

呼吸促進剤ともいい、延髄にある呼吸中枢を興奮させる薬剤。重症疾患や薬物中毒時、麻酔時などに生ずる呼吸抑制や麻痺(まひ)、新生児仮死の際などに呼吸を促進する目的で使用され、救急薬として重要な薬剤である。

 呼吸中枢は、血液中の二酸化炭素分圧の上昇、酸素分圧の低下、血液の水素イオン濃度(pH)の低下などによっても興奮する。また末梢(まっしょう)的に反射調節を受けており、頸動脈(けいどうみゃく)球や大動脈弓の化学受容体および頸動脈洞などの圧受容体を介して反射的に調節されている。直接呼吸中枢に作用するものとして、二酸化炭素、ジメフリン、ドキサプラム、ジモルフォラミン、オキソカンフル、ニケタミド、ブフォゲニン、アミノフィリンなどがあり、頸動脈洞を刺激して反射的に呼吸中枢を興奮させるものにロベリン、ニケタミド、鼻粘膜を刺激して反射的に興奮させるものとしてアンモニア水、アルコール性飲料、呼吸抑制剤に拮抗(きっこう)するものにレバロルファン、エドロホニウムがある。カフェインなどの中枢神経興奮薬もその作用を有している。

[幸保文治]

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